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今週の「取材中に刺さった」一言

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「社会保障は経済対策だ」 下流老人の著者、藤田孝典さん(12月12日)

2016年12月30日 03時00分 更新

記者:塩塚未


  • インタビューに答える藤田孝典さん=2016年12月12日、埼玉県の聖学院大学

 先の臨時国会で成立した年金制度改革法案。年金支給額の抑制を強化するとあって、高齢者の「痛み」と「対策」について意見してもらおうと訪ねたのが、著書「下流老人」で話題の藤田孝典さん=NPO法人ほっとプラス(埼玉県)代表理事=だ。ところが、インタビューで返ってきた答えは予想に反したある“経済政策”だった。

 ■現役世代にまで及ぶ影響

 藤田氏は言った。

 「アベノミクスは今、個人消費がほしいんでしょ。だったら、社会保障ですよ」

 つまり、個人消費が増えないのは「年金を含む社会保障に不安があるため。将来に不安があるから、みんな消費をせずにため込む」という主張だ。

 年金抑制の影響は現役世代にまで及ぶ、ということなのだろう。

 では、どうすればいいのか。語ったのは、「逆に、将来不安がなければみんなお金を使うようになる」ということ。社会保障を充実させることで将来不安をやわらげ、現役世代の消費を増やそうという提言だった。

 ■増税理解に大学無償化?

 こうした主張は、証券会社のアナリストの間でも耳にすることだ。

 しかし、そのための財源をどう確保するのか、といった疑問が必ず付いてくる。

 藤田氏の答えは、増税だった。「合意があれば、国民負担の割合はまだ高められる」という。

 課題は、税の負担増にどう理解を求めるかだろう。

 それについては、「税の恩恵を受けることができる人が限られている」ことがネックになっているとの見方を示した。「税を払って損している」と感じる人が多ければ、「増税に賛同を得られるはずがない」というわけだ。

 打開策の一例として唱えたのは、「大学の学費無償化」だった。ある程度の所得がある層にも「メリットを感じられるサービスを支給することが必要」。それによって、初めて「やっぱり税金を払ってて助かった、という気持ちになれる」という。

 ■北欧で実績、成果も上がる

 藤田氏のところへ出向いたのは、年金制度改革法案成立目前の12月12日。彼が客員准教授を勤める聖学院大学(埼玉県上尾市)を訪ねた。

 「日本の現行制度のままでは限界がくる」と語る藤田氏。社会保障に十分お金を落とさない日本の現状は「アベノミクスでアクセルを踏みながら、ブレーキを踏んでいる状態」と指摘した。

 そのアベノミクスは昨年9月に「第2ステージ」(安倍晋三首相)に突入。「新3本の矢」のうち、第3の矢として「安心につながる社会保障」を掲げている。

 藤田氏はきっぱり言った。「社会保障は経済対策だ」と。こうした主張は「北欧ではすでに実施され、成果を上げている」とも語った。

 インタビューを終えて2日後。野党が「年金カット法案」と呼んで批判する中、年金制度改革法案は可決、成立した。

 税の受益と負担を考えさせられた一言だった。










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