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【交渉術入門】(1)成否の鍵を握るのは「BATNA」と「RV」

2017年03月29日 03時00分 更新

記者:岡重文氏


  • 岡 重文(おか・しげふみ)グロービス経営大学院教員、グロービス・マネジメント・スクール講師
     担当科目は「ファシリテーション&ネゴシエーション」、「クリティカル・シンキング」、「ビジネス定量分析」など。京都大学工学部応用システム科学専攻 修士課程卒業。NTTデータ、プライスウォーターハウスクーパースを経て、2000年にグロービス入社



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 皆さま、交渉は好きですか。

 前回は、トランプ米大統領も使う「アンカリング」(条件付け)についてご紹介しました(⇒こちら)。さて、これから4回にわたって、基礎的な交渉術を学ぶ講義を始めます。題して【交渉術入門】です。

 この講義に関心がある皆さまは、ビジネスの現場で、合意を得るために誰かと日々交渉し、頭を悩ませる場面に直面しているのではないでしょうか。

 交渉の好き嫌いはさまざまだと思います。「あまり好きではない」という方の中には、駆け引きが好きではない、コミュニケーションが面倒である、といった思いを抱いている方が多いのではないでしょうか。

 また、交渉に関連するキーワードとして、WIN―WINを目指せばいい、という意見を聞いたことがある方は多いと思います。

 このように、両者がハッピーになれればいいのですが、WIN―WINという名のLOSE―LOSE、つまり、単なる妥協になっていることが実際には多いのです。

 こうした状態を避けるために、これから始まる4回の講義では、

 (1)交渉をどのように捉えればよいのか
 (2)交渉に際してどんなことを意識すればよいのか
 (3)目指すべき状態はどんな状態なのか

 ―などに触れながら、交渉の基礎的なスキルについて一緒に考えていきたいと思います。

 では早速、ある事例を題材に、交渉の際に押さえておくべき基本的な考え方をご紹介しましょう。

 ■家電量販店にて

 あなたは、新たにパソコンを購入することになり、家電量販店に行きました。

 定価15万円のパソコンが、B店では12万円で売られていることを確認したうえで、A店にやって来ました。

 あなた「いくらまで値下げできますか」

 A店店員「13万円です」

 あなた「B店では12万円だったのですけれど…」

 ■交渉力の源泉は「BATNA」、「撤退の基準=RV」を持っておく

 こうした場面は、家電の買い物の際によくみられる光景ですよね。あなたが最後に発した言葉、これが交渉を語る際に外せない考え方、「BATNA」なのです。さて、「BATNA」とは何でしょうか。

 英語で表現すると、

 Best Alternative To a Negotiated Agreement(不調時対策案)です。

 簡単に言うと、合意できなかったときの最善の選択肢のことです。

 言い換えると、交渉がまとまらなかった場合でも、最低限、取り得る方策とも言えます。

 そして、交渉の際に、もうひとつ押さえておきたい考え方が「RV」です。こちらも英語で表現すると、

 Reservation Value(留保価値)になります。

 「RV」は、「BATNA」を行使した際に得られる価値のこと。どんな条件までなら交渉にとどまる価値があるのか。言い換えると、交渉を撤退する基準となります。

 先の例では、仮にA店での交渉がまとまらなくても、B店では12万円で購入することができます。

 つまり、「B店で購入すること」がこの場合の「BATNA」、そして「12万円」が「RV」になります。

 12万円で購入できる他の選択肢がある訳ですから、12万円以下にならないのであれば、この交渉を続ける意味はないということになります。

 ■強い「BATNA」が自信につながる

 交渉術と言われると、得てして相手といかに戦うかという交渉の場でのコミュニケーション戦術ばかりを考えてしまいがちです。

 しかし、それ以前に、自分が置かれている立場をしっかり把握することが実は重要なのです。

 強い「BATNA」があるということは、いざとなればこの交渉が成り立たなくても良いと思え、自信につながるはずです。

 一方で、「BATNA」が弱いと、なんとしてでも合意に到達しなければ、という焦りが生まれ、相手に足元をみられて悪循環に陥る可能性が高まります。

 つまり、交渉術のノウハウを駆使する以前に、「BATNA」によって交渉の成否の大部分は決まってくるのです。

 交渉を有利に進めるためには、強い「BATNA」を持つことです。相手と交渉に入る前に、自らの「BATNA」をしっかり押さえることがカギになってきます。

 また、実際には難しいケースが多いですが、相手の「BATNA」を弱めるということも有利に戦う上での方策になります。

 そして、「BATNA」にひもづく「RV」をしっかり意識することで、この交渉を続ける意味はあるかどうかの判断がつき、無駄な交渉を避けることができるのです。

 ■今日のまとめ

 交渉の成否は、交渉以前に決まっている。
 
 「BATNA」と「RV」を事前に明確に押さえ、自信を持って交渉に挑もう。

 次回は2週間後です。














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