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受動喫煙の対策が折り合わないワケ

2017年03月09日 03時00分 更新

記者:塩塚 未


  • 広がるたばこの煙。その害を受けるのは喫煙者本人だけではない

  • 塩塚 未(しおつか・ひでみ)
    北九州市出身、1998年入社。好きなことは、何もせずぼーっと過ごすこと。北九州西支局、編集センター、別府支局、釜山駐在、編集センターを経て、9月から東京支社。

 他人のたばこの煙を吸わされる受動喫煙の対策強化をめぐって、賛否両論が巻き起こっている。

 厚生労働省が1日公表した健康増進法改正案の原案。目玉は飲食店の「原則禁煙」だ。

 それに対し、反対派は「厳しすぎる」「たばこは法律で認められた嗜好(しこう)品だ」と反発。推進派は「健康被害は明確」「2020年の東京五輪を見据え、たばこのないオリンピックは国際公約だ」と主張し、平行線をたどっている。

 受動喫煙は望ましくない。そこに異論はないはずなのに、なぜ、折り合えないのだろうか。

 理由の一つに、「被害がはっきり見えない」ことがあるかもしれない。

 国立がん研究センターによると、受動喫煙の影響で少なくとも年間約1万5千人が死亡しているという。これは、交通事故による年間死者数の約4倍に上る規模だ。

 ただ、あくまでこれは推計に過ぎない。「どこの誰」と特定されたわけではない、“匿名の被害者”だ。

 死因についても、「どこの誰がいつ吸ったたばこの煙が、どこの誰のがんを誘発した」などと特定することは不可能だろう。

 ■すでに被害に遭っている

 被害が見えにくいため、記者自身も、対策強化への気持ちが揺らぐ。

 「飲食店を原則禁煙にすれば、つぶれる店が出る。厳しすぎる」と反対派に主張されると、「きっちり分煙すればいいのかも」と思ってしまう。

 たばこは吸わないし、他人の煙で嫌な思いをしたという記憶も特にない。喫煙者と一緒に食事をしても、服ににおいがつくなあと感じる程度だ。禁煙推進派の医師などによると、それはすでに受動喫煙の被害に遭っていることになるらしいが、実感はない。

 一方、飲食店の従業員の受動喫煙を避けるべきだ、という意見にも「確かにそうだ」と思ってしまう。

 大手ファミレスのアルバイトの中には若い人も多い。自分の子ども世代が学費を稼ぐためのアルバイトで将来がんになるリスクを負わされるかもしれないと考えると、「全面禁煙でいいかも」という気にもなる。

 屋内での禁煙を進めた国ほど、医療費の削減につながったデータがある、という主張もあり、社会保障費の増大に悩む国の国民としては「厳しくやるべき」と背を押されるようだ。

 ■厚労省が「社説」を配った

 そうした中、厚労省は1日に公表した改正法案の原案を報道各社に説明するため、記者たちに資料を配った。

 その中には、「強化賛成」が多数を占めるテレビ局やインターネットの世論調査の結果のほか、飲食店の原則禁煙を求める新聞社の社説も添えられていた。

 反対派も黙っていない。2月の自民党の厚生労働部会では、飲食店の原則禁煙に「反対」を唱えた意見が9割を占めた。

 このコラムを書いている3月7日には、自民党の「たばこ議連」の臨時総会が開かれ、「分煙の徹底」で対策を落ち着かせるよう厚生労働部会に要求することが決まった。

 その中身は、「飲食店やパチンコ店などは『喫煙』『分煙』『禁煙』を選んだ上で、その表示を義務づける」という内容で、業界の要望に沿った形となっている。

 「具体的な被害」を示せない中、賛成派は「世間」に、反対派は「業界」にそれぞれ傾き、平行線の幅を広げている。










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