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【有明海はいま】(2)ノリ漁バブル、佐賀で明暗 諫干寄りの西部は不作

2017年04月19日 03時00分 更新


  • 有明海で黒々としたノリを摘む東島吉孝さん。「養殖で一番影響を感じるのは温暖化」と話す=3月、佐賀市沖

 有明海異変の発端となった2000年度のノリ大凶作。実はその後、ノリは採れ続けており、近年はバブルに沸いている。

 佐賀市西与賀町。ノリ養殖業者東島吉孝さん(65)は2年前、黒を基調としたモダンな3階建ての自宅を建てた。キッチンとリビングが一体となった吹き抜けの空間が広がる。

 「昔からこんな家に憧れててね。これほど本格的になるとは夢にも思わんかった」。笑みがこぼれる。

 家だけではない。07年には自宅脇にノリの直売所を開き、11年にはノリの大型乾燥機を買った。自宅を含めてかかった費用は約6千万円という。

 それを可能にしたノリの売上金は今季だけで三千数百万円。「過去最高の売り上げで、倍稼いだ人もおった。ノリが採れ続けとるから、安心して投資できる」

 佐賀市の沿岸部などでは大きな家が建ち、車や最新式の漁船の購入も進む。

   ◆    ◆

 バブルの背景にはコンビニのおにぎりなどでノリの需要が高まったことがある。生産者は全国的に減っており、それを補ってきた中国などの海外産が不作になって値段がつり上がった。

 1枚10円前後だった平均単価は2015年度には12・81円、16年度には14・66円(3月下旬時点)。「低品質でも高値が付く異常事態」(東島さん)になっている。

 佐賀市近辺の有明海では、病害を防ぐ酸処理剤を使うことなどで安定生産を続けてきた。佐賀県はノリの販売枚数、額ともに14季連続で日本一をひた走る。

 東島さんはノリ大凶作の際、諫早湾の潮受け堤防前で行われた海上デモに参加した。漁船約1300隻が集う日もあり、仲間とともに「宝の海を返せ」と叫んだ。

 それから17年。諫干から約30キロ離れた自身の養殖海域では、事業の影響は感じていないという。

 「当時は経験したことのない大凶作でショックが大きく、諫干のせいだと思い込んでいた」

   ◆    ◆

 豊作の佐賀県東部と違い、潮受け堤防に近い西部は毎年のように赤潮が発生し、ノリの養殖は不安定な状態が続く。

 同県太良町の大鋸武浩さん(47)は古びた木造の小屋でノリを加工する。建て替えの金はなく、粘着テープで補修し、段ボール紙を貼ってすきま風を防ぐ。乾燥機は22年前に製造された中古品。収穫したノリをかき混ぜる機械は手づくりだ。「先進国の東部に比べ、こっちは発展途上国さ」

 今年は1月に入るとノリが色落ちし、2月下旬には採るのをやめた。「(値段がつかない)金髪のようなノリしか採れず、やる気を失った」。今季の売り上げは約1300万円。過去には100万円の年もあり、借金を背負う。東部の同業者から「よくやってられるな」とちゃかされる。

 大鋸さんは「諫干の調整池から汚水が注ぎ、潮の流れも弱くなって赤潮が長期化した」と訴えるが、関心は広がらない。「火の粉が降りかからないと、皆、自分の問題として考えない」

 有明海の東と西で、経済格差とともに意識の差も広がる。










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