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【会計のキホン】(1)東芝の決算発表に監査承認がないのはなぜ問題?

2017年05月24日 03時00分 更新

記者:溝口聖規氏



  • 溝口 聖規(みぞぐち・まさき)グロービス経営大学院 教員
     京都大学経済学部経済学科卒業後、公認会計士試験2次試験に合格。青山監査法人(当時)入所。公開企業の法定監査をはじめ、株式公開(IPO)支援業務などに従事。複数の大手監査法人を経て、溝口公認会計士事務所を開設。現在は、管理会計(月次決算体制、原価計算制度等)、株式公開、内部統制、企業評価等に関するコンサルティング業務を中心に活動している。



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 東芝が再延期していた2017年3月期の第3四半期決算を4月11日に発表しました。金融商品取引法では、上場会社は決算日後(16年12月末から)45日以内に四半期決算を公表する必要があるので、大幅に遅れた発表です。その際、監査法人の承認がない「異例の決算発表」と報道されました。これは、どれほど異例なのでしょうか。

 まず、押さえておきたいのは、「会計監査」の役割です。それは、会社のステークホルダーが安心して会社と関りを持てるよう、会社が作成する決算書に一定の信頼性を付与することです。

 そして、こうした「会計監査」は、すべての株式会社に義務付けられているわけではない、ということです。

 義務付けられている会社は、法令によって定められています。それは、以下の通りです。

 金融商品取引法:上場会社など(株主数が多い会社や公募債の発行会社も対象)
 会社法:会社法上の大会社(資本金5億円以上、または負債総額200億円以上)


 いずれも大規模な会社、あるいは株主、投資家などのステークホルダーの数が多いなど、社会的影響力の大きな会社です。

 今回の東芝の場合は、金融商品取引法の定めによるものです。当然ながら、上記法令以外によって作成する決算書には、会計監査は不要です。

 ■監査法人は「承認」せず、監査意見を述べるだけ

 次に、監査法人の「承認」についてです。

 実は、監査法人は会社の決算書を承認しません。

 会計監査の結果として「監査意見」を表明するだけです。

 監査意見は4種類です。(今回は四半期報告書なので厳密には監査の簡易版の四半期レビュー意見ですが、ここでは本決算と区別せずに話を進めます)

 (1)無限定適正意見:会社の決算書は会社の財務状況をすべての重要な点において適正に表している。

 (2)限定付適正意見:会社の決算書に一部、財務状況を適切に表してない部分があるが、決算書全体に対する重要性がなく、それ以外は会社の財務状況をすべての重要な点において適正に表している。

 (3)不適正意見:会社の決算書は、会社の財務状況を全体として適正に表していない。

 (4)意見不表明:会社の決算書やその根拠データが作成保存されていない等の理由で、会計監査が十分に実施できず、監査意見を表明できない。

 このうち、(1)と(2)は、会社の決算書はおおむね正しいと監査法人が保証しており、一般に「承認」や「お墨付」と言われる監査意見と言えます。

 今回、東芝が金融庁に提出した四半期報告書に含まれる決算書には、(4)の「意見不表明」が添付されていました。監査法人から、何の結論も入手してないわけではなかったのです。

 なぜ「意見不表明」だったのでしょうか。それは、会社が計上した米原発大手ウェスチングハウス社のストーン・アンド・ウェブスター社買収に伴う6,000億円超の損失をめぐる意見の不一致にあります。

 会社は「十分な調査と監査法人に対する説明をした」と主張しているのに対し、監査法人は「まだ損失金額と損失を認識すべき時期について十分な資料とともに説明を会社から受けていないため、監査を終了できない」としているのです。

 (3)及び(4)の監査意見は、会社の決算書は正しいとは言えず、監査法人は保証できないということを意味します。

 さらに、上場会社にとっては、証券取引所の上場廃止基準に抵触するという問題が生じます。

 その後、証券取引所は上場の是非を検討し、上場維持すべきでないとなれば、上場廃止となる可能性があります。

 これまでにも「意見不表明」の監査意見が付いたケースがあります。例えば、スカイマーク、カネボウ、ライブドアなどであり、これらの会社の経緯を見れば、いかに今回のケースが異例であるか、お分かりいただけると思います。













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