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【会計のキホン】(2)てるみくらぶの破たんは必然なのか?

2017年06月07日 03時00分 更新

記者:溝口聖規氏


  • 破産手続き開始に関する記者会見で、顧客や債権者に迷惑を掛けたとして謝罪する旅行会社「てるみくらぶ」の山田千賀子社長=2017年3月27日午前、国交省


  • 溝口 聖規(みぞぐち・まさき)グロービス経営大学院 教員
     京都大学経済学部経済学科卒業後、公認会計士試験2次試験に合格。青山監査法人(当時)入所。公開企業の法定監査をはじめ、株式公開(IPO)支援業務などに従事。複数の大手監査法人を経て、溝口公認会計士事務所を開設。現在は、管理会計(月次決算体制、原価計算制度等)、株式公開、内部統制、企業評価等に関するコンサルティング業務を中心に活動している。



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 格安海外ツアーを主な商品とする旅行会社のてるみくらぶが経営破たんしました(本来は「破産」ですが、ここでは経営破たんとします)。直接の引き金は、資金ショートによって、航空券の発券に必要なIATA(国際航空運送協会)への支払い(約4億円)が出来なかったことです。

 ところで、旅行会社は通常、顧客である旅行者からツアー前に入金を受けます。つまり、サービスを提供する前に、代金を回収するわけです。一般的に、そうした業態は「資金繰りには困らないはず」と言われています。

 営業活動に投下される「運転資本」は、一般的に「売上債権+棚卸資産−仕入債務」と表されます。

 ちょうど、差額部分が運転資本、すなわち、会社が事業を維持するために用意する必要があるおカネです。

 てるみくらぶのように、顧客から前金で入金される業態では、売上債権(加えて棚卸資産)がない、あるいは少なくなるはずです。顧客から売上代金の支払いを先に受け、そのおカネを仕入れの支払いに回すことができるからです。

 ではなぜ、資金繰りが「楽」なはずのてるみくらぶが、資金ショートし、経営破たんしたのでしょうか。いくつか原因を分析してみます。

 ●仕入れの支払いのタイミングが早い

 旅行会社から航空会社や宿泊施設への支払いは、ツアー出発日よりも早期に必要となることが通常です。

 そのため、旅行会社としては、仕入れの支払いのために、顧客からの入金を早くしてもらわざるを得ないのが実情でしょう。

 つまり、実際には、資金繰りが「楽」なビジネスモデルとは言えないのです。

 ●キャンセルポリシー

 てるみくらぶに限らず、日本の旅行会社は、顧客の利便性を高めるため、キャンセル期間を長く設定(顧客のキャンセル料が不要でその期間が長いという意味)することが少なくありません。

 ところが、旅先の宿泊施設などが定めるキャンセル料などの注意事項「キャンセルポリシー」は、それより厳格なケースが通常なのです。

 つまり、キャンセルが生じた場合、旅行会社はキャンセル料を顧客から取れないのに、宿泊先には支払わないといけない、といった事態が出てくるわけです。

 そうしたリスクは旅行会社が負っており、キャンセル率によっては収益性が相当圧迫されることになります。そもそもリスキーなビジネススキームだったと言えるかも知れません。

 ●仕入れコストの上昇

 格安旅行会社は、航空会社や宿泊施設などから余剰の席や部屋をいかに低価で仕入れられるかがKSF(主要成功要因)の1つです。

 ただ、昨今は、航空会社等の経営努力によって、余剰が減少しています(航空会社等にとっては収益性の改善)。その結果、旅行会社の仕入れコストは上昇傾向にあります。

 一方で、KBF(購買決定要因)は価格の安さですから、簡単には販売価格の値上げができないのです。

 ●広告宣伝費の強化

 収益性が悪化して、例えば逆ザヤ(赤字)となった場合、仮に顧客から売上代金が前金で入金されても、それを上回る仕入れの支払いを近く迫られる事態になりかねません。

 このため、次の商品を販売し、その入金を以前の支払いに充てないと、決済ができなくなります。

 報道によると、てるみくらぶは、広告宣伝を強化して顧客を呼び込もうとしたようです。これがさらに資金繰りを圧迫することになったと考えられます。

 それでもなんとか、おカネを回せている(まさに自転車操業)うちは良かったのですが、おカネが回らなくなると、ジ・エンドです。会社の経営が不安視され、顧客離れが進んだり、解約が増えたりすると、会社にはおカネが入らないどころか、逆に出て行くばかりです。

 てるみくらぶの試算表によれば、半年間で現預金が12億円減っています。

 このような要因がてるみくらぶの経営破たんにつながったのではないかと考えられます。格安旅行会社というビジネスモデルそのものに内在するリスクに加えて、外部環境の変化、そこに経営者の判断ミスが追い打ちをかけてしまったのかもしれません。




東京商工リサーチのウェブサイトより引用














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