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「仲介捨てた国、責任重く」 横浜国立大大学院教授(民法)・宮沢俊昭さんに聞く 論・諫早干拓

2017年05月23日 03時00分 更新

記者:御厨尚陽


  • 本紙インタビューに答える横浜国立大大学院の宮沢俊昭教授(撮影・佐藤雄太朗)

 −諫早湾の潮受け堤防の開門調査を行わないと表明した国の方針転換をどう見たか。

 「国は、開門を求める漁業者側と反対する営農者側の『仲介役』という立場を捨てた。両者の板挟みにあるという言い訳はもう使えない。問題解決に向けた責任が大きくなった」

 −国は漁業振興の基金案を軸に漁業者側との和解を図りたい考えだ。

 「現状では、うまくいくはずがない。事態を複雑化させた責任は、開門方針を二転三転させた国にあるのに、国はそれを認めようとしない。漁業者、営農者はそれを見透かし、国を信用していない。例えば、組織内でトラブルを起こした人が『俺がきちんとやるから付いてこい』と言っても、誰もついていかないですよね。それと同じです」

 −国が信頼を回復するにはどうすればいいか。

 「過去を清算しないと信頼は取り戻せない。現状に至った経緯を検証し、対応の不備など責任がある部分は謝罪する必要がある。国が自ら動くのが難しいなら、第三者機関に検証を委ねればいい。ここまでしないと解決は困難だ」

 −国が謝罪したとしても漁業者と営農者の対立は訴訟で先鋭化しており、事態が動くようには思えない。

 「法廷の場で、それぞれの権利を主張するのは当然のこと。問題は、開門の是非がシンボル化し、双方とも『この旗を降ろしたら負けだ』『生活が成り立たなくなる』などと強い不安を感じている点にある」

 「漁業者や営農者の心配を和らげ、対立熱を冷ますには、国が、有明海と周辺地域の将来像を具体的に示すことが必要だ。基金案を使ってこんな地域にすると示す。だから、開門しなくても安心してほしいと。それが和解にもつながる。漁業者からは『今までもできてないじゃないか』という批判が出るだろう。それを説得できるだけの計画を示せるか、国の責任が問われてくる」

 −有明海周辺の再生に向けて必要なことは。

 「今の有明海地域がどうなっているか共通認識をつくらないと話は進まない。裁判では都合のいいことを主張するばかりなので、法廷を離れた場で関係者が集まり、ノリの酸処理の問題など不都合な事実も含めて話し合う必要がある」

 −諫干問題に関しては、社会の関心が薄れてきている。

 「そこが一番の問題だ。関心が低ければ、農林水産省も徐々に手を引いて粛々と対応していく可能性がある。政治家も動かないだろう。世論喚起のためにも法廷闘争から脱し、有明海地域の未来を立て直すという原点に立ち返る必要がある」










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