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2017九州豪雨

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防災行動計画「タイムライン」九州84市町村が導入 水害への備え段階的に

2017年07月15日 03時00分 更新

記者:郷達也



  • CeMI環境・防災研究所の松尾一郎副所長

 台風や大雨による水害を想定し、自治体や住民、防災機関が取るべき行動を時系列でまとめた事前防災行動計画「タイムライン」を作る自治体が増えている。九州では浸水や土砂崩れで、住民の避難が間に合わない集中豪雨が相次ぐ。タイムラインは1級河川の流域自治体を中心に策定されているが、専門家は中小河川の氾濫に備えたタイムラインも必要と唱える。 

 タイムラインは2012年、米国のハリケーン被害を軽減させたとして注目され、日本でも広がった。国土交通省によると、6月までに、国直轄河川の流域にある730市町村が策定した。九州7県では84市町村が導入している。

 日本三急流の球磨川が流れる熊本県球磨村(人口約3850人)は先進地の一つ。球磨川の治水安全度は全国の河川より低く、集落の孤立が心配されるため、隣の人吉市とともに昨年6月に運用を始めた。

 「球磨川水害タイムライン」は、梅雨前の4〜6月から災害発生までの7段階に分けて、役場や消防、区長、民生委員など約40機関が取るべき約350項目の対応を整理した。

 川の氾濫や土砂災害が発生する恐れのある30時間前(ステージ2)は警戒段階で、区長が自主避難所を開設。家庭では最寄りの避難所を確認し、防災用具を準備する。23時間前(ステージ3)は村が指定避難所23カ所と福祉避難所1カ所を開設し、9時間前(ステージ4)ごろから住民が避難を始める想定だ。

 災害発生5時間前(ステージ5)には、逃げ遅れた人がいないかどうかを住民が名簿などを使って点検。発生(ステージ6)の際には、孤立集落の有無などを確認することにしている。

   ※   ※       

 球磨村は今月上旬、福岡県や大分県を襲った豪雨でタイムラインを活用した。6日午前5時、村に大雨洪水警報が出たと同時に対応段階をステージ1から2に引き上げた。

 役場では総務、建設などの担当職員5人が気象や災害の情報を集め、防災無線で介助が必要な人の自主避難を呼び掛けた。区長は公民館などに自主避難所を開設、数人が避難した。警報が解除されて2時間後の午後4時にステージ1に戻した。大きな被害はなかった。

 球磨村は全国で初めてタイムラインを導入した三重県紀宝町などと連携協定を締結。高齢、過疎地域の自主防災力の課題を共有し、改良を重ねる考えだ。

 並行して、過去に何度も水害に遭った渡地区(約500世帯)は「地区版」のタイムライン作りを進めている。久保信治区長(59)は「独居老人の把握や、誰が誰を助けるかを明確にした計画にしたい」と話す。

 今回の九州豪雨は、短時間に記録的な雨量を記録。中小河川の流域で被害が相次ぎ、住民が避難できる時間は短かった。

 タイムラインに詳しいNPO法人「CeMI環境・防災研究所」(東京)の松尾一郎副所長によると、中小河川の災害に備えて策定した自治体は少ない。松尾副所長は、避難準備に時間をかけられない場合にも機能するタイムラインが必要だと指摘している。

   ◇   ◇

 九州の国管理河川の流域でタイムラインを策定した主な自治体は次の通り。

 遠賀川=北九州市、福岡県鞍手町▽筑後川=福岡県久留米市、佐賀県鳥栖市▽松浦川=佐賀県唐津市▽本明川=長崎県諫早市▽緑川、白川=熊本市▽球磨川=熊本県人吉市、球磨村▽大淀川=宮崎市、宮崎県都城市▽川内川=鹿児島県薩摩川内市

   ◇   ◇

先手必勝の災害対応に CeMI環境・防災研究所の松尾一郎副所長に聞く 

 「CeMI環境・防災研究所」の松尾一郎副所長にタイムラインの意義を聞いた。

 −従来の防災対策と何が違うのか。

 「これまでは警報発表後の『現象発生事後対応型』だった。しかし、雨の降り方が極端に激しくなり、被害が拡大している。タイムラインは、災害が起こることを前提にした『先手必勝型』の災害対応だ」

 −策定のポイントは。

 「最初に最大クラスの災害を想定する。関係機関が議論し、要援護者の避難支援などそれぞれの役割を決める。計画、実行、検証、改善の繰り返しが重要だ」

 −都道府県が管理する中小の河川で導入した例は。

 「中小河川はまだまだ少ない。今月の九州豪雨で改めて分かったのは、最初に被災するのは中小河川の流域だということ。対応を準備する時間があまりなかったが、こうした災害でもタイムラインを機能させなければならない。行政や防災機関だけでなく、地域住民が身を守るコミュニティー(地区版)のタイムライン作りも急務だ」










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