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これぞ博多流、山笠が社員育てる 山のぼせ「ふくや」物語(1)

2017年07月26日 03時00分 更新

記者:ノンフィクションライター三宅玲子


  • 「学歴ではない。地域への思いがもてるか」と語るふくや社長、川原武浩(撮影・比田勝大直)


 櫛田入りとは、櫛田神社に山を担いで入るスピードを競う行事のことだ。選ばれる山の舁(か)き手は、26人(流によっては28人)の精鋭である。流によって選抜方法は異なるが、身体能力だけで選ばれることはまずない。流や町内のためにどれだけ働いているか、日頃からの献身と信頼が問われる。岡崎が憧れる「カッコいいお兄ちゃん」たちは、見た目がカッコいいだけではなく、町内の先輩後輩から信頼されるリーダーでもあった。

 山笠では男として憧れのロールモデルを見つけかけていた岡崎だが、中3の3月の卒業式前日、進路相談室にカンヅメにされた。そして女性担任から「卒業式には出させられん」と告げられる。担任は泣いていた。
 眉毛をそり落とし、背中に刺繍の入った学ランと、“ツッパリ”の象徴だった太いボンタンで卒業式に出ようと企んでいた岡崎は、式を乱すとの判断で参加を許されなかった。
 卒業式当日の夕方、岡崎は父親に付き添われて校長室に向かった。岡崎ひとりだけの卒業式が行われることになっていた。ところが、校長室には町内の山笠の怖い世話役たちがズラリと並んでいた。
 「僕だけのために、こんなにたくさん大人が集まってくれ、校長先生は紋付袴を脱がずに待っていてくれたと思ったら、泣いてしまいました。それで、いつかこの町に恩返しをしたいって思ったんです」

 3年後、高校を卒業した岡崎は、博多中3年時のあの女性担任に卒業証書を見せようと思い立つ。 高校でもいろんなことがあったが、なんとか卒業はできた。心配をかけた先生に報告したいと思った。
 ところが、調べて訪ねた赴任先で、女性担任は意外なことを言った。
 「知っとうよ。あんたが卒業したの」
 担任が保護者にまぎれて高校の卒業式に来ていたことを、このとき岡崎は初めて知る。

■失笑され、発奮して1位に

  以前、西流は追い山のタイムが遅かった。岡崎が赤手拭に選ばれた大学1年のときのこと。岡崎の町内の総代(代表)が、流全体の総務(幹部)になり、会議で「今年はタイムを上げたい」と発言したところ、他の町内の幹部から失笑がもれた。「そんなのムリに決まっとうやろう」という意味だ。

 この一件で、岡崎ら、町内の面々は逆に発奮する。
 櫛田入りする山の舁き手の選抜方法は、それまでの抽選から、持ち場に適した体格と適性で舁き手が選ばれる方法に変わり、岡崎はその1人に選ばれる。その年、タイムは前年の37秒から33秒に上がった。そして一昨年、ついに1位になった。
 「1年を通して櫛田入りのメンバー全員で集まって、速くなるにはどうしたらいいかを話し合ってきました。4年目でついに1位をとったときは僕らも号泣しましたけど、先輩たちも泣いて喜んでくれました。いつも学校で『西流は遅いもんね』と言われて悔しい思いをしていた小学生もうれしそうでした」
 

追い山で櫛田神社の清道を駆け抜ける一番山笠・中洲流=7月15日午前5時頃(撮影・佐藤桂一)
学校には反発したが、山笠で育てられたという岡崎大地(撮影・比田勝大直)
三宅 玲子(みやけ れいこ)<br />
1967年熊本県生まれ。ノンフィクションライター。「人物と世の中」をテーマに取材。2009〜14年北京在住。ニュースにならない中国人のストーリーを集積するソーシャルプロジェクト「BillionBeats」運営。福岡・住吉の夜間保育園「どろんこ保育園」のノンフィクションを今秋上梓予定。<br />









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