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30キロ圏避難に不安なお 玄海原発3号機の使用前検査開始

2017年09月12日 03時00分 更新

記者:山下真、吉武和彦


  • 玄海原発3号機の使用前検査を九州電力側に説明する原子力規制庁の高須洋司統括監視指導官(右奥)=11日午前、佐賀県玄海町

  • 九州電力玄海原発(右から)3号機と4号機=今年3月

周辺7市の足並みそろわず

 九州電力玄海原発3号機(佐賀県玄海町)で11日、再稼働に向けた最終関門となる使用前検査が始まった。原子力規制委員会による審査手続きが進む中、国が事故時の避難計画策定を義務付ける半径30キロ圏の3県8市町のうち、「地元同意」を表明したのは佐賀県と玄海町だけだ。2県7市は避難計画の実効性に不安を抱えているものの、手続き上、再稼働に同意か否かを唱える立場になく、見解も割れている。住民の不安は解消されていない。 

 「島外への陸路はこの橋しかない。安全に避難できるのだろうか」。伊万里湾に浮かぶ福島(長崎県松浦市)に住む徳田詳吾さん(65)が、島と佐賀県伊万里市を結ぶ「福島大橋」のたもとで首をかしげた。

 島は原発から最短12キロにあり、約2600人が暮らす。原発事故時、住民は主に橋を通って車で逃げる計画だが、橋は築50年で老朽化が進む。巨大地震を伴う複合災害では損傷の心配がある上、島内には国のガス備蓄基地があり、非常用ガスを運ぶタンクローリーで渋滞する恐れもある。

 「逃げられなければ、すぐに放射性物質が飛んでくる」。徳田さんは避難経路の拡充を求め、橋の新設を県に陳情するが、実現のめどは立っていない。

 30キロ圏の自治体はこうした課題を抱える。伊万里市、松浦市、長崎県平戸市、同県壱岐市の4市長は、避難計画の実効性や原発の安全性を疑問視して「再稼働反対」を表明したが、蚊帳の外に置かれている。

 「30キロ圏の自治体が県境を越え、防災に取り組む組織が必要だ」。平戸市の黒田成彦市長は7月、7市が連携する協議会の結成を呼び掛けた。避難の課題を共有し、ともに国に財政支援を求めていく狙いからだ。

 ただ、足並みはそろわない。伊万里市と長崎県佐世保市は賛同したが、佐賀県唐津市は「市内に5キロ圏の地区もあり、同じ立場で議論しにくい」。福岡県糸島市は「避難計画の改善は県と共に取り組んでいる」、松浦、壱岐両市は「7市そろわなければ連携の意味が薄れる」と距離を置く。そもそも再稼働について長崎県と唐津市は容認、福岡県と糸島市は「佐賀県の判断を尊重する」との立場だ。

 「原発被害に境界はないが、首長にはさまざまな政治的事情がある。国策への反対意見を言いにくいのだろう」と松浦市の宮本啓史市議。松浦、平戸、伊万里の3市議会では、宮本氏ら保守系議員有志が7月、安全対策の向上などを求める協議会を結成した。月1回、意見交換している。

 新たな動きは住民側にもある。松浦市の新松浦漁協は7月、玄海原発沖に66隻の漁船を集め、再稼働反対の海上デモを行った。志水正司組合長(69)は言う。「事故があれば漁業者は海や生活を奪われる。ここも原発の地元なのに、私たちの不安は国や九電に届いているのか」 

   ◇   ◇

再稼働への賛否交錯

 九州電力玄海原発3号機の使用前検査が始まった11日、地元では再稼働に不安と期待の声が交錯した。

 原発から約1キロの集落に住む佐賀県玄海町の公務員小野政信さん(60)は「先日の原子力防災訓練は一部の住民しか参加しなかった。避難の実効性を高めるまでは、再稼働をすべきじゃない」と批判した。

 国や県は原発事故を想定した合同防災訓練を3、4日に実施。県内では原発30キロ圏の玄海町、唐津、伊万里両市の住民計854人が避難訓練(屋内退避を除く)に参加した。ただ、圏内には18万人超が暮らしており、住民の間には「全員が無事に避難できるのか」と不安が残る。

 歓迎する声もある。佐賀商工会議所の井田出海会頭は「電力の安定供給につながり、電気代の値下げも期待できる」。唐津上場商工会(唐津市)の古賀和裕会長も「作業員の宿泊など地域への経済効果もある」と話した。

 古賀会長は同時に、玄海原発1〜4号機が稼働していた福島第1原発事故前の時代のような需要は望めないとし、「地元も原発依存から脱却していかないといけない」とも語った。










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