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8年前の総選挙に見た「慢心」の怖さ

2017年10月08日 03時00分 更新

記者:福間慎一


  • 鳩山内閣が誕生した2009年9月16日朝、国会議事堂前で初登院の民主党議員を待ち構える報道陣。現場にいた私も「これからどうなるんだろう」と興奮気味だった記憶があるが…

  • 福間慎一(ふくま・しんいち)
    福岡市生まれ、福岡県粕屋郡育ち。2001年に西日本新聞社に入社、文化部、長崎総局、本社報道センターなどで記者。紙面編集にも約4年間従事しました。16年9月から1年間、ヤフーのニュース編集部に出向。特技は居酒屋のメニューを指1本でくるくる回すこと。

 忘れられない光景がある。

 8年前、2009年7月12日の午後のことだ。約1カ月後に衆院選公示を控えたその日、担当していた選挙区に、民主党(当時)の代表だった鳩山由紀夫氏が入った。すでに民主党の優位は明白で、選挙前から「政権交代」が見込まれる中での遊説だった。

 キノコの栽培工場を訪問した鳩山氏が、囲み取材に待ち構える記者たちの前に姿を現した。テレビ局の記者がマイクを差し出す。そこで鳩山氏はふいに、自らが手にしていたキノコをマイク代わりに話し始めた。冗談に、一瞬あっけにとられた記者たち。鳩山氏は笑みを浮かべてキノコをしまい、質問に答え始めた。

 そこには、緊張感がなかった。

 当時の取材メモを見ると、そこで鳩山氏は「全部小選挙区で勝ちうると思う」と語り、「(長崎を)完全制覇したいね。そのぐらいのムードはできつつある」とまで言っている。ともすれば私たち報道陣にも、緊張感が欠けていた。

 世論は盛り上がり続け、長崎の4小選挙区は鳩山氏の言葉どおり民主党が全勝した。7割を超える内閣支持率でスタートした民主党政権は迷走を重ねて3年後、記録的な惨敗を喫して再び野党となった。そして立ち直れないまま改名し、今回、党そのものがなくなった。あっという間の8年だった。

 「向かうところ敵なし」の状態を維持するのは難しい。裏返せば、最高の状態はそこから悪い方向にしか行かない、ということでもある。さらにそこに「慢心」が加わると、思っていた以上に下り坂を転げ落ちることになる――。政治もビジネスも同じだし、友人や家族との関係でさえ、そうかもしれない。

 3年ぶりの総選挙が近づいてきた。西日本新聞webの公式ツイッターでは、文中に「#選挙行きま 」(「ま」の後はスペース)と、その後に「す」や「せん」、「しょう」などを入れて選挙への思いを自由に発信してもらう企画をやっている。

 <政党・政治家の組んずほぐれつっぷりを映画「アウトレイジ」と重ねてしまい、何だか “全員悪人” に見えてきました><自身が意思表示をするため、バカなことをしてる議員に面と向かってバーカと言ってやるためにも必ず行く!>――寄せられる投稿はエッジが効いていて、なるほどと思わされる。

 中には、<なんでそこで、選挙「いきません」なんて選択肢をマスコミが用意するの?>という指摘もある。その通りかもしれない。でも関心を持ってほしいからこそ、背を向ける人の話も聞きたい。2014年前回衆院選の小選挙区の投票率は戦後最低の52.66%。全国で4921万9687人もの人が投票しなかった。

 めまぐるしく合従連衡し、候補者も有権者もメディアも体験したことのない新しい構図は、久しぶりに「大丈夫」のない戦いとも言えるだろう。「#行きま」は小さな企画だけど、みんなで考えるきっかけにの一つになればいい、と思っている。










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