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「田の神さぁ、守ってください」 噴火警戒する宮崎・えびの市 平穏と繁栄の願い込め

2017年10月20日 03時00分 更新

記者:木村貴之


  • 右手にしゃもじ、左手に茶碗を持つ農民姿の田の神さぁ。鮮やかな紅白のペイント、「ホレ、飯食え」と言わんばかりの表情がユーモラスだ=宮崎県えびの市末永地区

  • 稲穂が色づき、収穫期を迎えた宮崎県えびの市の田んぼ。地元産ヒノヒカリは日本穀物検定協会の2015年産米の食味ランキングで最優秀の「特A」を獲得した

 南九州の鹿児島県や宮崎県南部地域には古くから、田んぼ周辺に「田の神(かん)さぁ」と呼ばれる石像を置き、自然災害を鎮めて五穀豊穣を願う風習がある。現存する石像は地域全体で約2千体。米どころの宮崎県えびの市では約150体の石像を地域のシンボルに位置付け、観光資源として発信中だ。ところが、収穫期を目前にして両県境の霧島連山・新燃岳で噴火が続き、えびの高原(硫黄山)の火山活動も活発化。地域では警戒を強める一方、石像に平穏と繁栄の願いを託しつつ日々を送っている。

 ■垂れた眉とおちょぼ口

 えびの市末永地区。田んぼ近くの祠(ほこら)に、高さ50センチ程度の石像がある。「シキ」と呼ばれるわら製の編み物を被った農民姿で、右手にはしゃもじ、左手には椀(わん)を持っている。シキや衣服は赤、顔は白くペイントされ、垂れた太い眉とおちょぼ口が愛らしい。「ホレ、飯食え」と言わんばかりのユーモラスな表情が笑いを誘う。

 こうした石像は、江戸時代中期以降に作られたとみられ、最も古いのは宝永2(1705)年の年号が刻まれた鹿児島県さつま町の「紫尾の田の神」。えびの市にも江戸中期の2体(いずれも市文化財指定)が残る。

 市などによると、その形状から(1)しゃもじや飯を盛った椀を持つ男性をかたどった農民型(2)衣冠束帯姿の神官型(3)地蔵型(4)自然石型―と、おおむね4種類に分かれる。

 山の神が春になると里に下り、田の神になって田を守り、農民の暮らしを見守って恵みをもたらす―。こうした田の神信仰はさまざまな様式で全国に広がったとみられるが、鹿児島県やえびの市は「石像に願いを託すのは南九州独特の文化ではないか」という。

 ■「山を鎮める」神官型も

 えびの市中内竪地区にある石像は、高さ約80センチの神官型。田んぼのあぜにあるが、他の石像とは違って田んぼには背を向け、南方を見つめている。


えびの市中内竪地区にある神官型の田の神さぁ。衣冠束帯姿で田んぼを背に南を向き(上)、視線の先には霧島連山が横たわる(下)。石像は新燃岳大噴火から間もない享保10(1725)年の作
四方を山で囲まれた宮崎県南部の盆地に位置するえびの市。北に川内川、南に霧島連山(上)を仰ぎ、中央に田園が広がる









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