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“化粧師”の極みの磨き 東洋ステンレス研磨工業(福岡県太宰府市)

2017年11月12日 03時00分 更新

記者:郷達也


  • 金属材に研磨剤を塗り装置に通す従業員と門谷豊社長(右)

  • 東洋ステンレス研磨工業が外壁を手掛けた米国のウォルト・ディズニー・コンサートホール(同社提供)

  • 小判型のチタン製の社員証

屈指の技術、海外からも引き合い

 「武骨な表情」の金属板が数分できらめくような輝きを放つ。国内外の有名な建築物に使われるステンレス製品を供給する東洋ステンレス研磨工業(福岡県太宰府市)は、全国屈指の研磨、加工技術を誇る。

 ユニークなのは化粧のような工程。金属板(縦2・4メートル、横1・2メートル)に研磨材を塗り、「バフ研磨装置」と呼ばれる専用の機械を通す。職人たちは研磨の音と振動を耳で感じ取り、微妙な圧力のバランスを調整して機械を操作。光沢の加減を見ながら研磨剤の種類を変えて4往復程度させ、エアーで粉などを吹き飛ばしていく。最終的に表面の細かな欠陥点を検査しながら、デリケートな表面を滑らかになでるように拭き上げて完成だ。

 調理場や冷蔵庫、医療関連機器、半導体製造装置用部材…。「ステンレス製品を見ない日はない」と、昨年就任した門谷豊社長(46)は言う。「美観と機能、高付加価値、耐久性の提供」を使命とする同社の技術は、家族3代、半世紀にわたって磨かれてきた。

 ■海外のホールに

 「磨くときれいになり、シャープで清潔感のあるステンレスを街中に広めたい」。門谷社長の祖父博氏(故人)が1966年、大手ステンレスメーカーを退職後に創業。当時はブリキのバケツに代表されるようにさびる製品が多かった時代。博氏は手作業でステンレスの研磨に乗りだし、金属にデザイン性の高い研磨を施す「意匠金属板」加工のノウハウを培っていった。

 83年、門谷社長の父で現会長の誠氏(72)が2代目に。「福岡から最先端の技術を進める」と技術力強化や設備投資に傾注し、業績も拡大していった。

 同社が「集大成の一つ」と胸を張るのが、世界的建築家フランク・ゲーリー設計の米国ウォルト・ディズニー・コンサートホール(2003年完成)の外壁加工だ。「帆船の帆が波間にきらめいて、夕日と朝日で表情を変えるような表面を」とのテーマの世界的コンペで、同社の洗練された製品が評価された。福岡発の数千枚のステンレススチールが「ものづくり日本」の底力を世界に知らしめた。

 ■本物の質感追求

 リーマン・ショックの不況の波が国内にも押し寄せたころ、同社は「金属化粧師」と銘打った企業精神を打ち立てた。磨く全製品に魂を込め、どんな金属にも輝きと特性を持たせるよう社員一人一人に再認識させた。沈みがちだった工場に一体感が生まれ、苦境を乗り切った。

 その後は、特殊加工により金属表面が金と同様の輝きを持ち、軽量で耐食性が高いという特長の「IPゴールドチタン」を開発。浅草寺(東京)など国内の神社仏閣の意匠飾りに活用されるだけでなく、イスラムやアラブのモスクなどでも引き合いが増加中だ。近年は、歯磨き後の口の中を見る道具など、ステンレス雑貨のブランドも展開。今春からはベトナム人技術者も2人雇っており、将来的には海外展開も探る考えだ。

 「金属素材の本物の質感や触感は、人工知能(AI)ではなく、技術者のものづくりの文化が支えている。次世代のデザインを開発し、魅力ある金属板をこれからも作っていきたい」。門谷社長は、歩みを止めない。

   ◇   ◇

 記者メモ 小判の社員証に誇り

 門谷豊社長に見せてもらった社員証に驚いた。小判型の黄金色に輝くのは、何と純チタン製なのだ。作製費は非公表だったが、恐らく相当高いだろう。名前とともに企業精神の「金属化粧師」が刻印されていた。工場内では、その化粧師たちが数十台の研磨機や特殊機械を操り、取引先のあらゆるニーズに応える。小判が光るように、磨きに磨きを重ねる姿に感銘した。

■東洋ステンレス研磨工業株式会社 1966年、門谷博氏が福岡市内で創業した。75年、現社名に組織変更。89年、現在の太宰府市水城に社屋と工場を新設、移転した。2013年に第15回福岡デザインアワード優秀賞、14年に第5回ものづくり日本大賞優秀賞を受賞した。従業員38人。17年5月期の売上高は4億5000万円。









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