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デジタルが再発見する「地元」の魅力 「そのままを、アートに」チームラボ

2017年12月08日 03時00分 更新

記者:福間慎一


  • 「デジタルが、自分の地域を好きになるきっかけになれば」と話すチームラボの松本明耐さん

  • 大天守台跡の石垣に映し出された動物たちのデジタルアート

 夜の福岡城跡をデジタルアートで彩るイベント「城跡の光の祭」が、福岡市で開かれている。石垣に映し出される動物たち、二の丸の木々を彩るさまざまな色の物体、明滅する石段…。福岡城跡の新しい姿を体感できる展示を仕掛けているのは、プログラマーや建築家らで構成するアート集団「チームラボ」。2001年の設立以来、世界各地でイベントを手掛けており、国内では東京や大阪といった大都市以外でも多くの来場者を集めている。福岡城でのイベントに携わるメンバーの一人、松本明耐さんに聞いた。

 今夏、長崎県大村市の大村公園と佐賀県武雄市の御船山楽園でもデジタルアートの展示を手掛け、大村では約1カ月間に約6万3千人、武雄では当初予定の期間を延長し、3カ月間で海外からも多くの来場客が訪れた。

 有料で実施した大村、武雄で多くの方に来ていただいただけでなく、2017年12月に入場無料で実施した徳島市では10日間で約32万人が訪れた。人口の多さの問題ではなく、地方そのものに隠されていた魅力が再発見されたからかもしれない。

 チームラボが取り組んでいるのは「デジタイズドネイチャー(Digitized Nature)」。「自然が自然のまま、街が街のまま、アートになる」ためのアプローチだという。

 物質ではない「デジタル」は、いまあるものそのものに重ねることができる。都市や自然が持つ遺産を、もう一度拡張することができる。

 近代以降、日本では情報の流通が盛んになる中で、街や地域はどこも同じように発展してきた側面がある。建物や公園も、似通っていることが多い。でも近代以前は、それぞれの土地の個性が、それぞれに発達していた。

 地方には、そうした近代以前のシーンが多く残されている。例えば武雄の御船山も近代以前の公園。現在の公園と違って、自然と公園の境界はあいまいという特徴がある。ほかにも土地の祭りにはすごくエッジの効いた良い祭りがある。そこでしか生まれなかったもの、そこにしかないものこそが、地方の魅力だと思っている。

 ただ、そうした歴史的な遺産と「アート」はデジタル以前は相性が悪かった。

 相性が悪かったというのは、例えば城跡だと「建て直す」「改修する」といった選択肢になる。それは簡単な作業ではないし、形を変えてしまうことにもなる。

 それが必要ないデジタルを使って、歴史あるものにスポットライトを当てることで、自分がいるところってこういうところなんだ、と思ってもらえる体験を生むことができる。

 12月の福岡城は内覧会で高島宗一郎市長が触れていたように「一年間で最も人が少ない時期」。その城跡の風情とデジタルアートの融合が、多くの人の流れを作っている。単に「きれい」だけではない吸引力があるのか。

 「福岡って、長い歴史があるんだ」「福岡の街ってどう変わってきたんだろう」と歴史の文脈で街や自分を捉え直す新しい体験になっていると思っている。書籍ではなかなか得られない、感覚的なものは、地域のことを愛し、好きになるきっかけになる。

 物質ではないデジタルでの表現が生まれたことで、自然そのもの、街そのものにフォーカスすることができるようになったという点と、地方そのものの価値は、近代以前のものに、本質的なものがあるという点。その二つがマージ(合わさって)して、チームラボの、展示になっている。

 現実的に、集まるきっかけは「きれいな光だな」とか「子どもが楽しめそう」とかそういうことかもしれない。でもそこに足を運んで、歴史に思いをはせて帰ってくれたらいい。親子の会話にもなると思う。


広場の木々を幻想的に照らし出す光
天守台から見渡すと、さらに幻想的な光景が広がっている









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