人手不足が進む一方、労働時間の削減が求められる中、企業にとって「働き方改革」が2018年の主要課題。地場企業もさまざまな取り組みを始めている。厳しい経営環境が続く地方銀行は業務の大幅見直しに着手。テレワークの導入も本格化している。
九州の大手地方銀行で、業務を抜本的に見直す動きが広がっている。肥後銀行(熊本市)は2017年度、40万時間分の事務作業削減を目標に据え、福岡銀行(福岡市)も1万2千件に及ぶ業務の「断捨離」に着手した。人口減少やマイナス金利で経営環境は厳しさを増し、金融とITを融合した「フィンテック」も台頭する中、安全や機密保持を最優先としてきた特有の働き方を根本的に変え、顧客サービスを強化する。
肥後銀は17年度、本部と支店の事務業務の見直しを始めた。専従チームが支店を回り問題点を把握した上で、事務作業を(1)廃止(2)集約・集中化(3)仕事の流れの変更−の三つの視点で効率化する。押印や金庫保管対象の書類削減、現金自動預払機(ATM)への住所変更手続き機能の追加など、対象は多岐にわたる。
4〜9月に54件を見直し、総労働時間の2割に充たる20万時間分の業務を削減。事務作業が原因の残業がなくなったという。10月以降の下期は月十数件ずつ対象を増やし、18年3月末までさらに20万時間分を減らす方針だ。担当者は「疑わなかった銀行の常識を変えたい」と語る。
一方、福銀は行員に業務改善のアイデアを募り、17年に1万2千件を集約。うち本部で6800件、支店で600件を同年2月から一斉に実行に移した。「銀行業務は事務の比率が高いが、営業の比率を高めたい」(担当者)という。
本部は全社的な事務ルールの変更に力を入れ、稟議(りんぎ)書の削減▽顧客査定の本部集中化と簡略化▽金庫開閉や出勤管理を記録する執務日記の廃止−などを実施。支店でも会議の削減や報告の簡素化など、細かな改善を積み重ねる。
既に定型事務作業にロボット技術を導入したほか、審査業務への人工知能(AI)活用も検討。柴戸隆成頭取は「いらない物を、どんどんスリム化している。まだやれる余地が多くある」と述べる。
西日本シティ銀行(福岡市)も1月4日に「業務革新室」を発足。谷川浩道頭取は「オフィスの抜本的合理化をする」と、トップダウンで構造改革を断行する覚悟を語る。スマートフォン向け独自アプリで先行するなど、独自のサービスも強化する。地銀大手が先行して成果を上げることで、他の地銀にも同様の動きが広がりそうだ。