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イップス 克服のすすめ 失敗予期、脳の変調に原因 「当たり前のプレー」困難に

2018年02月02日 15時00分 更新

記者:谷光太郎


  • 選手へのカウンセリングに取り組む河野昭典氏(左)と息子の聖氏

 野球やゴルフに親しんでいれば耳にしたことがあるだろう。「イップス」−。10年ぶりに改訂され、1月に発売された岩波書店の国語辞典「広辞苑」第7版に新たに加わった言葉だ。体が硬直して、野球で狙った所に投げられなくなる、ゴルフで思うようなパッティングができなくなるなどの現象。悩まされるプロスポーツ選手も多いが、克服に向けた動きが福岡県内でも出てきた。

ホークスの元アドバイザー提言
症状認め、心身休めて


 「イップスとは精神的な要因によって、これまでできていたプレーができなくなる運動障害です。テニスや卓球、スポーツ以外だと楽器の演奏でもあります」。横浜市で「イップス研究所」を運営するサイコセラピストの河野昭典氏(59)は説明する。

 2013年まで3シーズン、プロ野球の福岡ソフトバンクホークスとメンタルアドバイザーとして契約。さらにイップス克服を目指すアスリートなどを競技やプロアマを問わず約5千例診察し、克服の過程を紹介する書籍も著した。

 自身も高校、大学で硬式野球の投手だったが、大学2年時に急なイップスを経験した。自分の経験や、その後の研究を通した上で、克服法として提唱するのは「無意識のメンタルトレーニング」だ。

 イップスの“正体”は「予期不安」だという。「またこのような失敗をするかも、と予期するときの脳の働きです」。鍵を握るのは脳の後部にある小脳。「人間の行動の9割は無意識によるもの。小脳の働きです」とした上で「大脳から伝達された情報を小脳が処理して必要な指示が大脳の運動野(体に運動を命令する場所)に送られるのが本来の流れ。緊張状態など何らかの理由で、小脳が情報を処理しきれなかったり、運動野への伝達が困難になったりすると、症状として表出します」。

 河野氏は心理テストも用いたカウンセリングや独自のメンタルトレーニングを下地に理論を積み重ねた「スポーツ催眠」という方法論を提唱。1回1時間半から2時間の面談で、小脳の緊張を緩和していく。「まずは自分が『イップス』になっていると認めること。その上でリラックスする、休む、という手順がとても大切なんです」と強調する。昨年8月には福岡市に福岡支所を開設。やはり野球経験者の息子の聖(せい)氏(27)とカウンセリングを行っている。

 河野氏の理論を、指導者と選手の接し方に生かしたチームがある。福岡県飯塚市の飯塚高野球部では、昨年12月に河野氏が吉田幸彦監督(62)など指導者や選手にイップス克服について講演を行った。「ふたをするのではなくイップスだと認めてください」というメッセージに、社会人野球の東芝などでプレーし同校を率いて2度甲子園に出場している吉田監督は驚いたという。克服できず、心ならずも野球から離れる選手も見てきたからだ。

 直後から、吉田監督は症状が出ている選手に「イップスは今日はどんな感じだ?」と毎日のように声を掛けた。すると「今日は大丈夫ですよ」と次第に明るい声が返るようになったという。「大学や次のステップでも野球を続けさせたい。そのための手助けができれば」と吉田監督は願う。

 体と脳の関係の研究は日進月歩で進む。イップスと認めて向き合うことが対処法の一つとなれば、新たなスポーツの世界が広がるかもしれない。










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