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使わなければ衰える 4桁の内線番号すら苦手に

2018年02月09日 03時00分 更新

記者:福間慎一


  • 電話をよくかける職場に戻ってきたが、番号を覚えるのが苦手になってしまった

  • 福間慎一(ふくま・しんいち)
    福岡市生まれ。2001年に西日本新聞社に入社、文化部、長崎総局、本社報道センターなどで記者。16年9月からヤフーに出向、17年9月からqBiz編集長。特技は居酒屋のメニューを指1本でくるくる回すこと。

 逆上がりができない、と子どもが言うので「手本を見せてやる」と意気込んだことがある。見ててね、と棒をつかんでヨッ…と、あえなく失敗した。何度も挑戦してやっと回れたが、翌日は脇腹や上腕の内側など日常ではあまり意識しない部位が筋肉痛になっていた。おそらく四半世紀ほどのブランク。当然と言えば当然だ。

 使わないと、ダメになる。車も家も、体も同じだ。

出向先から戻ってときどき直面する小さな悩みが、内線番号を覚えられないことだ。出向先ではほとんどがチャットやメールでのやりとり。出向前は取材が中心だったので連絡は社外の人とがほとんどだった。

 現在の職場ではときおり内線を使うのだが、情けないことにとっさのときにたった4桁の番号が出てこない。実は自分の名刺に書いてある外線番号も、暗唱できない。固定電話ばかりだったころは、友人や親類の電話番号を10件ぐらいは軽く覚えられたのに…。

 電話番号離れが言われて久しい。2007年6月にNTT番号情報(現在のNTTタウンページ)が実施した調査では「ここ数年で電話番号を覚えられなくなった」という人が80.5%に達していた。それから10年、すでにそういう調査すら見かけなくなった。

 昨年7月に発表された総務省の調査では、状況がさらに進んでいる。固定電話の利用率は、高齢者を含む全年代でも2012年の6.8%から16年には2.6%に減少。じわじわと増えているのがLINEやフェイスブックなどからつなぐネット電話。「番号」そのものが少しずつ不要になりつつある。

 ここ数年、若い世代に関してよく耳にする「キーボードでの文章入力が苦手」という現象も、少し似ているかもしれない。先日、酒席で初めて顔を合わせた20歳の男性には「スマホで何でもできるから、PCいらないっしょ。フリック最強っすよ」と断言された。

 フリック入力については、毎日スマートフォンを使う自分も、上達しつつある。記者のくせに、ノートとペンを忘れてしまったことがある。取材を受けていただいた方にお詫びして、フリックでメモを取っていたら、思いのほかスムーズに記録できた。

 ノートの文字を自分でも判別できないことがよくあるひどい乱筆なので、いつまでも読める字が保たれるフリック入力は、思った以上にありがたい。いい気になって講演会のメモをフリックで取ろうとしたとき、ふと冷静になった。周囲から見れば、講演も聞かずにスマホをいじくっている不届き者以外の何者でもない。

 しかもフリック頼みになると、元々下手な文字が、さらに衰えてしまう。なるべくメモを取るようにしているが、自分の字がどんどん劣化しているように思えてならない。漢字は読めても、書けなくなったなあ、という人はいないだろうか。

 使われずに、失われていく能力。でも逆上がりも電話番号を覚える頭も、生活に不要だからと、完全に捨て去っていいものか。一度なくすと、取り戻すのは大変。あまり「断捨離」はせず、ときどき使っておいた方がよさそうだ。










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