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電力会社が「ひな人形」を飾る理由 客との接点、取り戻せるか

2018年02月23日 03時00分 更新

記者:石田剛


  • 「きゅうでんe―住まいる」のひな飾り。4月3日まで飾られる予定だ

  • 人形は全て九電社員の親族の手作り。温かみのある作品が並ぶ

  • ハスの根に端切れをあしらった飾りなど、色とりどりの作品が目を引く

 桃の節句が近づき、街角でひな飾りを目にする機会が増えた。福岡都心部の、とあるオフィスビルにも今年、新たに飾られるようになった。

 そのビルとは、福岡市中心部を南北に走る渡辺通り沿いにある電気ビル新館。九州電力が2017年9月、1階に開いた体験型ショールーム「きゅうでんe−住まいる福岡」の一画だ。

 かわいらしい男女のひな人形、福岡県柳川市伝統の「さげもん」、ウサギの三人官女など数十品。やや殺風景なオフィスビルが並ぶ中、色とりどりの飾りは人目を引く。

 飾り付けをしたのは九電福岡営業所。担当した1人で「キレイライフアドバイザー」を務める西美弥子さんに尋ねると、こんな説明が返ってきた。「目指すは”インスタ映え”する場所です」。

 電力会社が「インスタ映え」。連想しにくい取り組みの背景には、九電の模索があった。

 かつて、電気料金は九電の従業員が各家庭を戸別訪問して電力計を検針し、料金を徴収するのが一般的だった。今は電気使用量は自動で計測され、電気代の支払いも自動引き落としやコンビニ支払いが中心。社員が顧客の家を訪ねる機会は激減した。

 一方、電力の小売全面自由化で競争は激化。新電力への顧客流失を防ぎ、流れた顧客を奪い返すには、顧客との接点が鍵になる。

 こうした状況で、九電が力を入れているのが客との接点の再構築だ。「e−住まいる」はその一環。主に住宅のリフォームを検討している人向けに、IH調理機器や最新の家電などを紹介している。ただ、商業集積地の天神から少し外れていることもあり、認知度向上が課題だった。

 通りがかった人に、目を向けてもらえるには――。ひな飾りのアイデアは、福岡営業所の社員が出し合った。ただ、予算は限られる。すると、ある女性社員が「叔母が毎年自宅に飾っている手作りのひな人形やさげもんを借りられるかもしれない」と提案。すぐに採用された。

 ひな飾りがあるのは床暖房の紹介コーナーで、近くに行くと電気床暖房を体感することができる。さらに、見学者にはお茶とIH調理器で作った菓子を振る舞う。近隣の公民館にもこのスペースのことを紹介しているという。確かに「ショールームにお越しください」より「ひな飾りを見ながらお茶でもいかが」の方が訪問の呼び掛けはしやすい。

 電力の小売全面自由化が始まった2016年以降、九電は各地の営業所が季節に合わせた飾り付けやイルミネーションなどを競うように取り組むようになった。渡辺義朗営業本部長は「少しでも打ち解けた雰囲気をつくり出せるように現場の裁量で工夫してもらうようにした。競争が厳しくなる中、社員の意識がかなり変わってきた」と話す。他企業では当たり前かもしれないが、ようやく電力会社も動きだしたということか。

 興味深いのは、今や電力、ガス双方の販売で九電と競合するようになった西部ガスも、顧客との接点機会を改めて重視していることだ。

 ガスは検針業務や開栓の立ち会いが義務づけられている。本来は電力会社よりも客との接点が多いはずだが、実際には顧客の流失が続いている。西部ガスも、九電の営業所ネットワーク同様「資産」を生かし切れていなかった反省の裏返しだ。

 新たな技術や制度が打ち出される業界だが、むしろ重みを増すのは、顧客にいかに目を向けてもらうかという原点。お堅い印象のエネルギー各社が工夫を凝らせば、サービス向上や選択の機会を増やすことにつながるだろう。










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