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元記者ピロシの醤油屋今日談

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他人事ではない「三河屋サブちゃん」の今後 醤油屋今日談(4)

2018年02月23日 03時00分 更新

記者:川崎弘氏


  • 「わが社のサブちゃん」こと、配達を担当している先輩たち(シフトの都合上、今回は2人だけ)

  • 川崎弘(かわさき・ひろし)氏
    1980年、佐賀市生まれ。2003〜17年、西日本新聞の記者として事件、経済分野などの取材・執筆を手掛ける。17年10月、妻の実家である大分県日田市の醤油・味噌製造会社「まるはら」に転職。14年ぶりに新入社員に。ロック、カレー、日本酒好き。



  あの東芝がスポンサーを降りる日曜日の長寿アニメ「サザエさん」。新スポンサーのうちの1社には、ネット通販大手「アマゾンジャパン」の名が報じられている。

 昭和の香り漂う磯野家のお茶の間が、巨大IT企業のマネーによってどう変貌を遂げるのか――。新聞やネットでは、冗談交じりの憶測が飛び交う。

 平成が終わろうとしている今、波平さんが緑茶をすすりながら、スマホやタブレットを使いこなすようになるのは時間の問題かもしれない。ただ、勝手口から威勢よく現れる三河屋のサブちゃんが、「ネット通販の宅配業者に転身するかも」というネタを先日、日経新聞のコラムで読み、胸騒ぎを覚えた。

 というのも、中小規模の醤油屋には、サブちゃんのように自社商品の宅配を続けている会社が少なくないからだ。弊社にも4人の配達のスタッフがいて、お得意先の商店や個人宅を日々トラックで巡回している。

 その宅配エリアは、会社がある大分県日田市と近郊に限られてはいるが、電話で注文が入れば、醤油1本でも送料無料でお届け。中には40キロほど離れた人気観光地の湯布院や福岡県久留米市にも訪問先があり、タイミングが合えば当日配達も可能。エリア内であれば、ネット通販大手に引けを取らない利便性だと思う。

 配達担当の先輩によると、サブちゃんのようにお客様の勝手口を預かることができるのは「信頼の証」であり、誇りであるそうだ。

 実際、長年のお得意先には、注文が来ていなくても、家族構成などから醤油が切れそうな時期を見計らって定期的に訪問するという。人間関係が密な田舎だからこそ成り立つ商習慣。考えようによっては、ボタンを押して日用品を注文する、アマゾンの「Amazon Dash Button」をしのぐサービスなのだ。

 ただ、ここ10年は訪問先の減少が続いている。配達先の多くは、過疎化で人口減少が進んでいることに加え、核家族化や高齢化で1世帯当たりの食事量が少なくなっているからだ。携帯電話やインターネットの普及で、日常生活での密な関係が敬遠されていることも一因かもしれない。

 長年培ってきた配達網をなくすのはもったいないが、残念ながら新規の顧客は少ない。今後伸びる見込みが立ちにくいだけに、いかに維持するかは大きな課題だ。

 そんな状況だけに、「同志」であるサブちゃんの通販宅配マンへの転身は妙に現実味があり、怖い。仮にそうなれば、信頼関係をベースにお客さまの勝手口を預かり、みそや醤油を売る時代が過ぎ去ってしまうのではないか、という気さえする。さて、どうしたものか――。

 いろいろ考えてもしょうがない。どうせ答えは風の中。「今」と向き合いながら進むしかない。そういう感覚を味わえるのも、新聞社を辞めて中小企業で働く醍醐味だろう。










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