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元記者ピロシの醤油屋今日談

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ドタバタ劇の食品商談会 接客の「いろは」を学ぶ 醤油屋今日談(5)

2018年03月09日 03時00分 更新

記者:川崎弘氏


  • まるはらのブースで商品をPRする私(右)

  • 各社のブースで埋め尽くされた「フーデックス ジャパン」の会場

  • 川崎弘(かわさき・ひろし)氏
    1980年、佐賀市生まれ。2003〜17年、西日本新聞の記者として事件、経済分野などの取材・執筆を手掛ける。17年10月、妻の実家である大分県日田市の醤油・味噌製造会社「まるはら」に転職。14年ぶりに新入社員に。ロック、カレー、日本酒好き。



 千葉市の幕張メッセで3月6〜9日に開かれている「フーデックス ジャパン」という食品商談会に来ている。国内外から3千社以上が出展する大きな催事で、わが社も販路を広げるべく毎年出展。各ブースでは多種多様な食品のPRや試食提供が行われていて、見て回るだけで楽しいイベントだ。

 ただ、ここに来るまでの準備が大変だった。催事に向けてハーブやスパイスを使った調味料の新商品開発を予定していたのだが、実際は普段の業務をこなすので精いっぱい。

 作業はずるずると遅れ、商品ができたのはほんの数日前。しかも、まだ完成とは言えない状況で、商品名は二転三転し、値段も未定。運送業者が荷物を引き取りに来た時は、まだ説明資料を刷るコピー機がフル稼働中で、間に合わなかった分は手荷物として会場に持ち込む羽目になった。

 今回に限らず、新商品を開発する時は、毎度こんなドタバタ劇らしい。新入社員の私はほとんどタッチしていないが、正直に言うと、傍から見ていて一抹の不安を覚えた。振り返ってみると、微笑ましくもあるが…。

 私が催事に出るのはまだ4回目。最初に出たときは緊張で表情がこわばり、Facebookに画像をアップすると、友人から「怒ってるの?」というコメントをいただく始末だった。

 見るに見かねたのか、居合わせた経験豊富な出店者から「コツ」を教わった。両手をへその下あたりで組み、左手を右手首に軽く添える。これが接客の基本ポーズだという。背筋を伸ばして手を後ろで組むと、警備員のような姿勢になり、警戒心を与えてしまうらしい。立ち姿一つでも無知を思い知らされたちょっと苦い経験だ。

 いざ催事が始まると、台湾の貿易会社のバイヤーから「このラムネは輸出できるのか」と質問されたり、商品をご愛用いただいているシェフから「いつも助かってますよ〜」と励まされたりと、連日大忙し。いつもは工場勤務なのでお客さまの反響を肌で感じることが少ないため、こういう場はとても勉強になる。慣れない接客が、いつの間にか高揚感を帯びてくる。

 ただ、気を付けないといけないのは、お客さまにとって、うちのブースは膨大な数のうちの一つでしかないこと。4日間で100人以上の方と名刺を交わすが、実際に取引につながるのはほんの数件だそうだ。現実は厳しい。
 
 仕事の後、うちの人気商品である鮎の魚醤(ぎょしょう)を刺身醤油として使ってくださっている東京・六本木の飲食店を訪ねた。「ほかに代わる商品がないですよ」とこの上なくありがたいシェフのお言葉に手応えを感じ、すっかりワインに酔ってしまった。ああ、いい気分だ――。
 
 おっと、調子に乗ってはいけない。時間と手間をかけて築いた信用が、ちょっとしたことで全て失われてしまうことはよくある。酔うのは、酒だけにしなくては。一晩明けてしらふに戻ると、神妙な気持ちになった。

 きょうは催事の最終日。気を引き締めていこう。










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