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”駅遠・築古・旧設備”の物件に入居待ちができる理由 「DIYリノベ」が街を変える

2018年03月11日 03時00分 更新

記者:福間慎一


  • 第一吉浦ビルに隣接する第二吉浦ビルもDIYリノベーション賃貸。1階には家具を作る工房がある

  • リノベーション中の部屋(2月下旬撮影)。4月からキッチンスタジオに生まれ変わるという

  • 交流拠点としてにぎわいを生み出している上長尾テラス

  • 福間慎一(ふくま・しんいち)
    福岡市生まれ(6歳まで城南区、その後粕屋郡)。2001年入社、文化部、長崎総局、本社報道センターなどで記者。16年9月からヤフーに出向、17年9月からqBiz編集長。特技は居酒屋のメニューを指1本でくるくる回すこと。


「街のDIYリノベーション」の可能性

 就職氷河期に大学を卒業した吉浦さんにとって、右肩上がりのいわゆる「いけいけどんどん」志向から脱するのは難しいことではなかったかもしれない。「人口が減って、縮小する社会になった今、何でも新しく、大きくすることはできない。大事なのは建物や立地ではなく、コミュニティー、じゃないでしょうか」。

 今、第一吉浦ビルでは入居した若い住民たちが交流を深めあい、退去時には送別会が開かれる。吉浦さんは所有する他の老朽化したビルも、DIYリノベーションの物件に生まれ変わらせた。

 家賃も変わった。第一吉浦ビルではかつて3DK、家賃4万7000円だった部屋がDIYリノベーションを経て現在は1LDK、7万3000円。築年数も旧設備も関係ない、ブルックリンのスタイルが再現されている。

◇   ◇   ◇

 吉浦さんは2年前、「樋井川村」という会社を興した。明治時代から昭和初期まで、吉浦ビルがある城南区樋井川地区をはじめ、周辺の南区の一部も含む場所に実在した村から名前をとった。住民同士が顔見知りだった、ゆるやかな共同体づくりを目指している。

 吉浦ビル近くの商店街にあった築35年のアパートをDIYリノベーションして2年前に作ったのが、コミュニティー食堂「上長尾テラス」だ。カフェとして利用できるほか、現在はセミナーや祭りが開かれている。また、時には作家やアーティストによる期間限定のショップに姿を変え、街に新たな人の流れと活気を生みつつある。

 かつて本当に「村」だったこの地域は高度成長期に人口が急増。代々農業をしてきた吉浦さんの祖父も、時流に乗ってビルを建てた。そして現在、一帯は空き店舗も目立つ街になっている。

 人口が増え続ける時代なら、区画整理して街全体を整備する先行投資をしても、回収できるだろう。でも「縮小する時代になった今、これまで余分に作ったものを減らしたり、形を変えたりして生かしながら、うまくまとめていく方がいい」と吉浦さんは考えている。

 「不利な局面でどう戦うか。合戦で言う『しんがり』みたいな視点が大事だと思います」

 これから多くの地域が直面することになる、厳しい現実。樋井川村で進む「街のDIYリノベーション」は、一つのヒントになるはずだ。

築45年の第一吉浦ビル
入居者のDIYリノベーションをサポートするデザイナーの西谷直也さん(右)と打ち合わせをする吉浦隆紀さん
第一吉浦ビルの廊下。古いマンションにしか見えないが…









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