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【あなたの特命取材班】エスカレーター「片側空け」は欧米から 歩くと危険、鉄道各社「2列で乗って」

2018年03月09日 03時00分 更新

記者:山下真


  • 地下鉄天神南駅のエスカレーター。急ぐ人のために右側を空け、左側に立つ利用者が多い=福岡市中央区

 3月8日は「エスカレーターの日」。1914年、日本初のエスカレーターが東京で試験運転された日だ。地下鉄で通勤する福岡市の20代女性から「エスカレーターがいつも混雑する。利用者は必ず右側1列を空けるが、両側に並べばいいのでは」と、素朴な疑問が特命取材班に寄せられた。マナーとして定着している「片側空け」。実際はどうなの?

 通勤客でごった返す福岡市営地下鉄天神南駅。エスカレーターを見ると、多くの人は左側に並び、急ぐ人が空いた右側を駆け上がっていく。見慣れた光景だが、傍らには看板があった。「手すりにつかまり、2列で乗りましょう」

 同駅によると、片側空けは望ましい利用方法ではないという。「安全のためには2列で乗るのがいい」と江利稔駅長は話す。

 理由がある。同駅では2016年、エスカレーターに乗っていた50代女性が後ろから走ってきた男とぶつかって転倒する事故が起きた。市交通局によると、こうした転倒・落下事故は11年度以降、市営地下鉄で年間28〜48件に上る。JR九州や西日本鉄道も10年ごろから、歩行禁止を呼び掛けている。

 日本エレベーター協会(東京)によると、通常のエスカレーターは段差20〜23センチ、幅1メートル程度。これに対し、公共施設の階段は建築基準法で段差18センチ以下、幅1・4メートル以上と定められている。「設計上、エスカレーターは歩くことを想定していない」と言う。歩くことは危険なのだ。

       ■

 片側空けは百貨店などでもよく見掛ける。どんな由来があるのだろう。「国際化が進む過程で、欧米式マナーを学ぶべきだという価値観があって広まった」。エスカレーター文化を研究する江戸川大学の斗鬼正一教授が解説する。

 斗鬼教授によると、片側空けは1944年ごろのロンドンの駅で推奨され、欧米各国に広まった。当時はマナーというより、その方が輸送効率が高まると考えられていた。日本では70年の大阪万博を控え、阪急電鉄が梅田駅構内で呼び掛けたのが始まり。折しも敗戦から立ち直り、経済大国に躍進していく時代。「外国人に恥ずかしくないマナーを」という意識が普及を後押ししたという。

 90年ごろには、東京都心の地下鉄の駅でも定着。当時の新聞は「エスカレーター『新秩序』」と紹介し、やがて全国に普及した。東京の右空けに対し、関西は左空けというのが特徴だ。斗鬼教授は「急ぐ人を優先し、1列空けるという効率重視の価値観が時代にマッチした」と分析する。

 いったんマナーと思い込んでしまうと、習慣を変えるのは難しい。群衆行動に詳しい京都大学の木下冨雄名誉教授は「どれほど安全性が向上するかなどの根拠を示さないと、理解を得にくいのではないか」と話した。 










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