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玄海再稼働で再び町に特需 「原発あるから」依存なお 廃炉時代の自立模索も

2018年03月15日 03時00分 更新

記者:水山真人


  • 作業員を乗せる大型バスや工事用の重機が行き交う九州電力玄海原発前=13日、佐賀県玄海町(写真の一部を加工しています)

 6年余り全基停止していた九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の3号機が23日にも再稼働する。貧しい農漁村だった玄海町に原発建設計画が浮上したのは半世紀ほど前。以来、町は原発の受け入れと引き換えに経済的恩恵を受けてきた。東京電力福島第1原発事故を経てもなお、原発への依存は続く。「廃炉の時代」をにらみ、自立の道を探る動きも出ている。

 玄海原発の敷地に、作業員を乗せた大型バスが次々と乗り入れる。正門から数百メートル離れた場所にはショベルカーなどの重機が並び、新たな安全対策で手狭になった敷地を拡大する造成工事が急ピッチで進む。

 福島の事故から約9カ月後の2011年12月、玄海原発は全4基が停止した。大きな打撃を受けた町の経済は今、「再稼働特需」で息を吹き返しつつある。

 原発から南東へ約1キロ。溝上孝利さん(59)が営む民宿「要太郎」も原発停止後、宿泊客がぱたりと途絶えた。再び客が戻り始めたのは、再稼働に向けた安全対策が始まった13年ごろから。客室稼働率は停止以前より3割ほど増えた。

 この間、溝上さんは原発関連以外の収入を増やそうと、町のふるさと納税の返礼品となる海産物を販売したり、高校生のスポーツ合宿誘致に力を入れたりしてきた。「豊かな自然や食を生かして暮らしていけるよう、変えんといかん」

 一方、原発では今後も新たなテロ対策施設の建設が控える。いずれ定期検査も行われ、作業員らでにぎわう。「やっぱり原発があるから町は大丈夫だ」。町民から、そんな声も漏れる。

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 原発の稼働と町の財政は直結する。18年度一般会計予算案の歳入は、国の交付金など原発関連が6割。原発停止に伴う税収減で17年度、23年ぶりに地方交付税(普通交付税)を受け取る「交付団体」になったが、「再稼働すれば税収が回復し、19年度は不交付団体に戻る」(岸本英雄町長)。

 町議会は昨年9月の選挙で、原発推進派が全議席を占めた。年内にも改定される国のエネルギー基本計画に、原発の新増設を明記するよう求める意見書案を19日の本会議で可決する。

 「意見書は原発立地町の責任だ」と町議会の脇山伸太郎総務文教委員長。原発に世論の厳しい視線が注がれる中、増設にこだわる背景には「税収減につながる1号機の廃炉決定がある」とみる町民もいる。

 「原発がある町から、原発“も”ある町へ」。岸本町長が唱えてきたキャッチフレーズだ。実際には町も町議会も、原発に依存する姿勢を変えていない。

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 町民の受け止め方は一様ではない。福島の事故で、原子力災害への不安は以前より高まっている。町の人口は1955年に9720人だったが、今年2月現在、5717人に減った。原発の恩恵を受けつつ、過疎化に歯止めはかからない。

 町とは対照的に、自立を模索する動きもある。

 農家や商業関係者が16年、町おこしチーム「Genkai Hot Runner(GHR)」を結成した。「若い人が減り、このままでは町が寂れる」。代表の世戸耕平さん(38)は危機感をあらわにする。

 目を付けたのはイチゴやハウスミカンなどの農産品だ。原発補助金を活用し、佐賀県内有数の産地になった。隣接する唐津市の飲料メーカーと共同でイチゴやミカンを使ったサイダーを商品化し、年間2千本を出荷。福岡市内にアンテナショップの開業も目指す。

 「原発があったから産地になれた」。GHRメンバーでイチゴ農家の渡辺高広さん(54)は言う。「でも、原発の増設は現実的には無理。地域が自立して生きていけるようにしなければ」










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