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特急列車で弔い酒 相席客の厚意に感謝

2018年04月01日 03時00分 更新

記者:木村貴之


  • コンビニで買ったカップ酒と肴を特急列車に持ち込み、亡き同僚をしのんだ弔い酒。大分から博多までの帰路、しめやかに開くことができたのは相席した乗客の厚意のおかげだった(撮影・木村貴之)

 新幹線車内で豚まんを食べるのはアリかナシか―。そんな話がSNSで論争になる時代ではあるが、訳あって先日、先輩記者2人と列車内でしめやかな酒盛りを開いた。コンビニで買ったカップ酒と乾き物の肴(さかな)を指定席車両に持ち込んで…。ところが、事態は予期せぬ方向に転がった。

 博多〜大分を約2時間で結ぶJR九州の特急「ソニック」。大分からの帰路、座席を向き合うようにセットして、4人掛けに3人で座った。客は少なく周りは空席だらけ。早速、静かに献杯を交わしてちびちびやりだした。

 その時、乗車券を手にした若い女性が現れ、こちらを見ている。まさか、と思ったが、図星だった。彼女の席は、4人掛けで一席だけ空いていた私の隣の窓側だったのである。彼女は「すみません」と言いながら、いかにも居心地悪そうに座り、イヤホンで音楽を聴き始めた。

 この酒盛り、実は病気で急逝した同僚記者の弔い酒だった。大分での通夜の帰りに、故人をしのぼうと考えたせめてもの儀式だったのである。人懐っこく、家族思いだった彼の人柄、仕事でのあれこれを語り、不意の別れの悲しみを紛らわそうとしていたのだ。

 しかし、突然そこに放り込まれた見ず知らずの女性にとって、われわれはカップ酒を手にした50過ぎのオッサン3人組。しかも喪服姿である。自分が反対の立場なら、わが身の不運を嘆いただろう。逆にわれわれも、その心中を想像して、思わず酒のふたを閉じた。

 気まずい空気が流れる中、車掌が「切符を拝見します」と現れた。すると、先輩の1人が機転を利かせてこう申し出た。「若い女性に申し訳ない。他に良い空席があるなら紹介してもらえないか」。事情を察した車掌は端末を操り、「良い席があります。こちらへどうぞ」。女性はほっとした表情を見せ、先輩に礼を言って席を離れた―。


木村貴之(きむら・たかゆき)<br />
1994年から西日本新聞記者。趣味は釣りとエレキギターの手入れ。好きな映画は「椿三十郎」「八つ墓村」「ナチョ・リブレ」。音楽はレッド・ツェッペリン「貴方を愛し続けて」、寺井尚子「ジャズ・ワルツ」、里見洋と一番星「新盛り場ブルース」









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