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長崎県庁跡地、活用決まらず 鍵の「MICE議案」は延期

2018年04月15日 03時00分 更新

記者:重川英介


  • バリケードに覆われた旧県庁舎。一等地、1万3千平方メートルの活用を地元は渇望する

 新庁舎への移転から3カ月、長崎市江戸町の旧県庁舎跡地の活用策がなかなか決まらない。「文化芸術ホール」の建設案を巡って県と市の綱引きが続き、方針決定がずれこんでいるためだ。打開に向けた契機とみられていた市の大型コンベンション(MICE)複合施設整備の予算案も今年2月、まさかの先送りで成立せず、依然めどが立たない。人通りが激減した旧庁舎周辺の商店街からは「早く決着しないと死活問題だ」との声が上がる。歴史的にも地理的にも長崎市を象徴する県都の中心。生まれ変わる日はいつになるのか。

政界の動きにほんろう

 この春、県庁舎跡地活用を巡る県と長崎市の協議が動き始める可能性があった。「鍵」を握っていたのが、市がJR長崎駅西側に計画するMICE複合施設。田上富久市長肝いりの事業である。

 市がMICE施設構想を打ち出したのは2014年3月。長崎駅西側に建設する施設に、国際的な学会や平和関連イベントなどの開催で「世界から人を呼び込む」と打ち上げた。その年の秋、市はJR貨物が所有する用地取得のための予算案を市議会に提案、だが議会はこれを否決。議事録には費用対効果に疑問が呈された、とある。

 ここで議会は不可解な行動に出る。同じ年の冬の定例会では、再提案された同じ議案を一転して可決。「MICEにかかわらず、用地の活用を検討する」との付帯決議を付けた。背景をある市議が明かす。

 「翌年には市長選があった。市長肝いりの議案の否決は、不信任を突き付けるのに等しい。だが議会として(田上市長に代わるだけの)候補者を見つけられなかった。続投を認めるには、可決しかなかった」

 田上市長が望んだかどうかにかかわらず、用地取得と3期目の当選は「バーター(引き換え)」をされた。MICE施設は、政界の動きに左右される「政治銘柄」になったのだ。

 この一件が県を惑わせる。幹部が言う。「市長と市議会は微妙なバランスで保たれている。市議会がMICE施設を拒否し、他の施設の建設を押し通す可能性もゼロではなくなったし、今もゼロではない」

 市は15年、市公会堂に代わるホール建設を県に提案。県は16年に「文化芸術ホール」などの整備案を表明。市は県に「MICE施設は実現できる。重複もない」と繰り返したが、県はその「証左」を求めた。それは市議会のMICE施設予算案の「可決」を意味した。

 市は今年2月、市議会定例会に予算案の計上を計画。県もひそかに協議再開の準備をスタート。打開に向けた動きがやっと始まるとみられていた。

 ところが、MICE事業の優先交渉権者グループの主力、大手ゼネコン鹿島が別の事故で参加資格を喪失。市は急きょ予算計上を見送り、ホール問題を巡る県との協議再開も消えた。水面下で、市議会は予算計上見送りを市長サイドに強く求めていた。

県と市「本音」はホール

 県も長崎市も、本音では県庁舎跡地に「ホール」を建設するのがいい、と考えているようだ。

 それが垣間見えたのは、市議会2月定例会での三藤義文副市長の答弁。市公会堂の代替となるホールの検討状況について進捗(しんちょく)と見解を問われ、県に秋波を送った。「県庁跡地にホールを建設するのがベターだし、県にもそう判断していただけるとありがたい」。昨年2月、県との協議を打ち切り「現市庁舎跡でのホール建設検討」まで表明していたが、県庁舎跡という“本命”は変わっていない。

 県にも早期に基本構想を定めたい思いはあるが、慎重な姿勢は崩していない。だが最近、県幹部はこうも言うようになった。「このままMICE事業予算案の可決を待っていれば、ホール建設をいつ表明できるのか、分からなくなってきた」。事業予算の可決を待ってホール建設方針を表明するシナリオが変わる可能性をにおわせる。

 市は鹿島に代わるゼネコンを見つけ、早ければ6月定例会に予算案を提出する方針。だが、来春には市長選と市議選がある。田上市長は進退を表明していないが、議会では「出る」との見方が大勢。市議が言う。「前回と同じ構図。MICE事業予算案を可決するかどうかは、次期市長として(田上市長を)認めるかどうかにかかっている」。状況は混沌(こんとん)としてきた。










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