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非常事態でもベストを尽くす 熊本市長の「沈黙」に共感

2018年04月15日 03時00分 更新

記者:木村貴之


  • 木村貴之(きむら・たかゆき)
    1994年から西日本新聞記者。趣味は釣りとエレキギターの手入れ。好きな映画は「椿三十郎」「八つ墓村」「ナチョ・リブレ」。音楽はレッド・ツェッペリン「貴方を愛し続けて」、寺井尚子「ジャズ・ワルツ」、里見洋と一番星「新盛り場ブルース」


 その後、福岡本社に転勤し、さまざまなメディアを通じて震災被災地の復興を見守っていると、ある雑誌の記事が目に留まった。「とにかく大混乱だった。職員自身も被災し、動揺する家族を置き去りにしてでも災害対応に当たるのは非常に困難。それでも職員たちは必死の思いで職場に駆け付けた」「発生から1カ月ほどは肉体的に相当つらかったが、何とか耐えた。市長就任時の約束は『市民の生命と財産を守る』。ここで倒れるわけにはいかなかった」―。発生から数カ月後の大西市長のインタビュー記事。ここでも自身の被災に触れてはいないが、当時の思いは読み取れた。

 熊本市によると、大西市長が震災発生後に登庁したのは、前震が14分後、本震は40分後だったそうだ。しかし、市長に直接聞いていたら、そんな質問に対してこんな突っ込みが返ったに違いない。「問題は時間じゃない。非常事態でもベストを尽くす。それがプロでしょう」

 熊本地震から2年。発生当時の一場面を振り返ると、震災取材の初動の記憶もよみがえる。熊本地震の前震時は酒を飲んでいたため、マイカー運転を妻に託して被災地へ。本震時は津波の警報サイレンが轟く中、避難中の妻を同乗させて別の被災地に走った。福岡沖地震(2005年3月20日)も思い出す。福岡市・天神の本社近くで飲み明かしていたところに震度6弱の揺れ。20分以内で職場に駆け付けることはできたが…。

 非常事態でもベストを尽くすのはプロであれば当然の話だが、非常事態だからこそさまざまな困難が待ち受け、その実践はなかなか難しいものだ。それを象徴付ける大西市長の「沈黙」に共感する一方、自分自身のほろ苦い記憶は教訓になっている。


本震から1週間後、少し疲れた表情も見せて災害対策本部会議で指揮を執る大西一史市長(中央)=2016年4月23日、熊本市役所
大西市長を取材中、目に留まったその足元。サンダル履きの隙間からのぞく右足の包帯が痛々しい=2016年4月23日、熊本市役所









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