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国宝の「金印」再現できるか 九州の学者らがチャレンジ

2018年04月17日 15時00分 更新

記者:野村大輔


  • 金印の製作を再現する九州鋳金研究会のメンバーたち=3月30日、福岡県宗像市

  • 溶かした金を鋳型に流し込むと、あっという間に固まった

  • 九州鋳金研究会が作った金印。湯口に近い部分が欠けている

古代技術解明の手掛かりに

 福岡市東区の志賀島で発見されたと伝わる国宝の金印「漢委奴国王」の製作を再現する実験が始まった。取り組むのは「九州鋳金研究会」に所属する鋳造技術や考古学などの専門家たち。古代の金印がどのように作られたのか、いまだ詳しいことが分かっていない謎の解明への挑戦だ。

 3月末、福岡県宗像市にある福岡教育大の鋳造室。九州鋳金研究会会長で、鋳金が専門の宮田洋平教授(58)が溶解炉を熱していた。地金を溶かす「るつぼ」が炉内にある。木炭を炉に入れると、火の粉が高く舞い上がり、真っ赤な炎は勢いを増した。

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」への金印の登録を目指すNPO法人「志賀島歴史研究会」(福岡市東区)の要請を受け、九州鋳金研究会は金印の製作技術の研究を始めた。

 昔の官印に関する文献を踏まえて工法を検討し、古代中国でも行われた蝋(ろう)型鋳造法を採用。金属を溶かす熱源は、現代ではコークスを用いるのが一般的だが、当時の工法に近づくため、木炭を使うことにした。

 鋳型は、宗像市の鋳物師、遠藤喜代志さん(68)が製作。福岡市博物館にある金印のレプリカを参考に、蜜蝋と樹脂を混ぜて原型を作った。実物よりわずかに大きくしたのは、後で加工するためだ。

   ◇   ◇

 歴史研究会のメンバーや福岡市博物館の学芸員など合わせて約30人が見守る中、実験が進む。

 火入れから約1時間。炉内の温度が千度を超えると、地金をるつぼの中へ投入した。金の含有率は実物と同じ。湯口まで満たすため、地金は実物よりも約90グラム重い。

 15分ほどで地金が溶けた。炉内の温度は1188度に達していた。地金を鋳型に流し入れると、オレンジ色の液体は急速に赤みを失って固まった。

 さらに1時間後。宮田教授が冷ました鋳型を木づちで割ると、砂まみれの金印が現れた。しかし…。

 「残念ながら失敗です」と宮田教授。金印の印台の一部が欠けていた。

 宮田教授によると、熱源に使い慣れていない木炭を使ったことで、地金が十分に溶解せず、湯口に近い部分まで行き渡らなかったようだ。

 当初は金印を鋳造後に印面に篆刻(てんこく)する予定だったが、その手法を含めて製作法を再検討し、実験は原型作りからやり直すことになった。ただ、古代の技術解明のためには、失敗を追体験することも大切なことかもしれない。

 九州鋳金研究会は、志賀島歴史研究会が10月に開く金印シンポジウムで一連の研究成果を報告する予定。歴史研究会理事の岡本顕実さん(74)は「金印を技術的に検証し、製作法が明らかになれば、世界の記憶登録への追い風になる」と期待を寄せている。

■国宝金印「漢委奴国王(かんのわのなのこくおう)」 江戸時代、志賀島で農民が発見したと伝わる。古代中国の史書「後漢書」に、後漢の光武帝が57年、福岡平野にあった奴国の王に印綬を与えたと記され、「漢委奴国王」と刻まれた金印のことだとされるが、偽物説もある。一辺2.3センチ。重さ108グラム、金の含有率95%。福岡市博物館所蔵。









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