ようこそ ゲスト様

qBiz 西日本新聞経済電子版

誇りの古里…でも不安 耶馬渓山崩れ1週間 迫る梅雨「再発怖い」

2018年04月18日 03時00分 更新

記者:吉川文敬、藤田沙智、西田昌矢


  • 山あいのわずかな平地に、家と田んぼがある山崩れ現場付近=17日午後0時48分、大分県中津市耶馬渓町

  • 住民の健康状態を懸念し、相談や血圧測定のため巡回する大分県の保健所職員(左)=大分県中津市耶馬渓町

 6人が土砂にのまれた大分県中津市耶馬渓町金吉(かなよし)の大規模山崩れから18日で1週間となる。大量の土砂や巨岩、雨にも阻まれ安否不明者の捜索は難航。現場は急峻(きゅうしゅん)な山に張り付くように集落が点在する地域で「次はうちも被害に遭うのでは」との不安も募る。溶岩台地の浸食による奇岩や断崖が織りなす景観は耶馬渓に人を呼び、地元の誇りでもあり続けたが、もろい地質は危険と背中合わせ。住民には葛藤が生じている。

 「とにかく早く見つかってほしい」。安否不明の岩下アヤノさん(90)の親族男性(87)は、ニュースで崩落現場を見るたびに胸を突かれる。崩れた土砂と巨石の壁に、言葉を失う。

 「ばあちゃん、うちの裏山も崩れるん?」。同じ金吉に住む中島欽さん(83)は、同居する小2の孫(7)がテレビを見るたび、心配そうに尋ねるようになったことを気に掛ける。孫は犠牲となった岩下義則さん(45)を「にいちゃん」と慕っていた。葬儀の後は家でふさぎ込んだ。「いろんなことが一気に起きて、整理がつかんのやろう。子どもは言葉で表現できん分、心の傷になっちょらんか」。県は16日、子どもの心に寄り添うスクールカウンセラー3人を地元の小中学校に派遣した。

 難航する捜索現場を見詰める住民たちは、そこに自らの暮らしを重ねる。「怖いよね。これから梅雨が来るし」。金吉川を挟み対岸に住む下堀保人さん(65)もその一人。心穏やかな暮らしは、取り戻せるのか−。「風の音がしただけで、目が覚める」「雨の予報を見ると眠れなくなった」といった声も聞かれた。

      ◆

 今回の現場の一部は、土砂災害の危険性の高い「土砂災害特別警戒区域」に指定されている。同市には、この区域が現時点で930カ所。地質の専門家によると、現場一帯は火山性の土壌で成り立っており、もろく壊れやすい。

 だが、そうした岩が風化してできる奇岩と木々がつくり出す景観は江戸時代から景勝として知られ、海外からも客を引き寄せてきた。「危険な岩かもしれない。でもそれらが織りなす特異な景観こそが資源」。近くでホテルを営む小畑吉太朗さん(74)は言う。

 1人暮らしの新井イクヨさん(87)宅も裏山は急斜面だ。新井さんは木漏れ日の差す庭先に椅子を置き、そうした山や斜面の下に広がる田んぼをのんびり見るのが一番の楽しみだ。別居する長女からは一緒に暮らそうと誘われる。それでも、今も思っている。「緑いっぱいで、居心地いい古里はここしかない」

 地元で自治委員を務める山田英美さん(64)も、同じ思いを抱く。「危険な区域であろうとなかろうと、私たちはここで生きていくんだよ」










九州経済 ニュースの最新記事



そもそもqbizとは?

Recommend

ランキング

Recommend

特集 最新記事

コラム 最新記事