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【あなたの特命取材班】土地開発「塩漬け」13年 膨らむ負債、組合分裂

2018年05月17日 15時00分 更新

記者:上野和重


  • 鹿児島市の小野地区。赤く囲った地域の開発が計画されている(市発行の資料から、2011年1月撮影)

  • 小野土地区画整理組合が事務所として使用していた建物。現在は閉鎖され、別に組合を名乗る事務所が2カ所ある=16日、鹿児島市小野3丁目

 低金利などを背景に、JR鹿児島中央駅前や繁華街・天文館周辺での再開発事業が活発化する鹿児島市。そんな活況の裏で同市北部を舞台にした大規模な土地開発事業が、10年以上も「塩漬け」状態になっているとの情報が特命取材班に寄せられた。取材を進めると、地権者らでつくる事業主体が混迷、身動きが取れなくなっていた。何が起きているのか。

 手つかずの山林や原野が広がる鹿児島市小野地区。関係者によると、九州自動車道沿いの約147ヘクタールを造成し、住宅地などを整備する計画が浮上したのは1994年ごろ。市は宅地開発が一段落していたことを受け、有効面積の7割を医療福祉、学校施設、残る3割を宅地とする異例の条件を付して2004年12月、事業主体となる土地区画整理組合の設立と事業を認可した。組合には全地権者約400人が名を連ねた。

 計画では05年に着工、11年度完成予定で総事業費は約320億円。市中心部まで車で約20分という利便性もあり、当初は複数の企業、団体が関心を示したという。ところが消費の落ち込みに加え、08年のリーマン・ショックによる不況の影響で施設誘致が頓挫。組合の資金繰りも徐々に悪化し、計画は停滞した。

 巨額の事業費と開発で数十倍に跳ね上がる地価。元理事は「組合内部の見通しの甘さだけでなく、利権にありつこうと怪しげな業者も入り込み、思うように進まなくなった」と言う。

 収入がないまま、事務所運営費や業務委託費などの出費が膨らむ中、事務局長の不正経理も発覚。一部組合員が事務所を占拠する騒ぎもあり、14年には執行部を一新した。負債はこの時点で13億円に達していた。

 しかし、その後も好転の兆しは見えず「嫌気が差した」として理事11人のうち5人が辞任。監事も3人のうち2人が辞め、事態は執行部の「内輪もめ」に移行する。

 残った理事の一人は「理事長は組合員全員に伝えず、勝手に事務所を閉めた。もはや信用できず、こちらで事業を進める」と話し、新たに事務所を設けた。

 他の理事4人と理事長は「この理事は組合の業務を妨害している」と反論、名誉毀損(きそん)などで提訴し、同理事の関係者を刑事告訴するなど泥沼化している。

 法に基づいて設置される土地区画整理組合は法人税などを免除される。一方で罰則はないものの総会の開催や決算報告書の市への提出が義務付けられている。しかし小野組合は15年度以降、総会を開いておらず、報告書も出ていないという。理事長は取材に「総会の開催に向けて一つ一つ問題を解決していっている状況だ」と釈明する。

 これに対して、市は「法と定款に照らして判断し指導している」と主張。土地開発事業の調査などを実施する国土交通省は「認可から10年以上も事業着手できていないのは好ましくない」と問題視しつつ「監督指導は自治体の責務」と対応を市に委ねる。

 解決策が見いだせない中、元理事は「これ以上傷口が広がらないうちに組合は解散した方がいい」と訴える。全国でも盛岡市などで10年以上、事業が進展しなかった組合が解散したケースはあるという。ただ、多額の負債を巡って組合員や債権者との協議が難航する可能性はある。

 小野地区の土地開発については、立て直しを図ろうと動いている地権者らがなお複数いるという。全国の土地開発事業を支援する東京の団体関係者は「再スタートを切るにしても、地権者を集め、改めて事業の目的と採算性を議論し、見直す必要性があるのではないか」と指摘した。

■土地区画整理事業 土地区画整理法に基づいて、駅前整備や災害復興、郊外の宅地造成など、土地の区画・形質を変えて街を整備する事業。公的施行と民間施行があり、民間では地権者でつくる土地区画整理組合や区画整理会社が行う。組合は土地の所有者または借地権者の3分の2以上の同意で、都道府県知事などの認可を得て設立。地権者は全員組合員となり、整理前の土地と整理後の土地を換地する。









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