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「悪」の企業、実はホワイト? ヒーローショー業界を変える“ヤバイ”挑戦

2018年06月03日 03時00分 更新

記者:福間慎一


  • 扉の外で出番を静かに待つヤバイ仮面。右手前はガンツ不動産のマスコットキャラ「たねぱん」(後ろ姿)

◇   ◇   ◇

 5月下旬の月曜日の朝、悪の秘密結社を率いる「ヤバイ仮面」は、福岡市・天神のオフィスビルの会議室前で出番を静かに待っていた。舞台は、ガンツ不動産(同市)が新たに始める聴覚障害者向けの手話通訳サービスの発表記者会見だ。

 勢いよく会場に飛び込んだヤバイ仮面は悪徳不動産を演じ、そして最後はきっちり撃退された。過酷な全身スーツだが、「気温よりも、湿度がつらい。高いとあっという間にやられます」と笹井さんは汗をぬぐう。

 そんな体力勝負の場面も多いが、社名とは裏腹に「ブラック」ではないという悪の秘密結社。では、具体的に給与や労務管理はどうやっているのだろうか。

 ヒーローショーや演劇、芸能関係の業界は、一般的に収入が不安定とされている。舞台への出演ごとにギャラが支払われ、その額にもケースごとに大きな差があるからだ。

 悪の秘密結社は、固定給だ。正社員に登用の場合は、手取りで18万円から始まる。下準備も稽古も道具製作も当然と言えば当然だが、すべて業務に位置付けている。職業柄、土日の出勤が多いが、平日に代休を確保して週休2日を徹底している。

 BtoB(企業間取引)の現場で鍛えられたという笹井さん。ヒーローショーの会社としては珍しく、社員には名刺の渡し方を教え、「3コール以内に取るのは当たり前」と電話の取り方の研修もやった。笹井さんは言う。「ヒーローショーをビジネスとして成立させ、雇用を生むのも大きな目標。会社として、演者を社会に通じる優秀な人材に育成していきたい」

 ショーにはトラブルもつきものだ。こんなこともあった。子どもの笑いを取るポイントに「かんちょう」をする場面を設定したときのこと。スタッフの社員はアクションに気合いを入れすぎて、なんと中指を骨折。しかし、これも当然かもしれないが、同社は「きちんと」(笹井さん)労災申請した。

 企業のプロモーションから結婚式まで、「主役」がいる限りヒールの出番はやってくる。秘密結社が昨年手掛けたショーは約200本。クライアントに合わせてストーリーを構成するので、当然手間がかかる。労働基準法の第41条には、 労働時間等の適用除外の例として「経営者と一体的な立場で人事権や経営にかかわり裁量権をもつ者」が挙げられている。

 そう、社長はなかなか休めない。



記者会見場にさっそうと登場するヤバイ仮面
笹井浩生さん
悪の秘密結社が発行する「ヒーロー新聞」
スポンサー枠があるヤバイ仮面のスーツ
福間慎一(ふくま・しんいち)<br />
福岡市生まれ、2001年入社。文化部、長崎総局、本社報道センターなどで記者。16年9月からヤフーに出向、17年9月からqBiz編集長。特技は居酒屋のメニューを指1本でくるくる回すこと。









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