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有名女優も愛用する「銀行員の日傘」

2018年06月10日 03時00分 更新

記者:木村貴之


  • 雑貨店の傘売り場に陳列中の「銀行員の日傘」を広げ、“最強の晴雨兼用傘”としてのスペックを熱く語る広報担当者。撮影時、スーツに着替えて銀行マンに扮し、演出に協力してくれた=福岡市・天神の「雑貨館インキューブ天神店」(撮影・木村貴之)

  • 林 秀信(はやし・ひでのぶ)氏 1946年生まれ、長崎県出身。東京で86年に「シューズセレクション」を設立。高品質なのに低価格の洋傘を多彩にそろえた自社ブランド「ウォーターフロント」を展開し、国内トップシェアの企業に育てる。2016年死去、享年69歳。(シューズセレクション提供)

 梅雨のシーズン。使い古した傘の新調を考え、福岡市・天神の雑貨店を訪れたところ、傘売り場でネーミングが気になる商品を見つけた。「銀行員の日傘」。形は普通のこうもり傘だが、ぎらつくような銀色の生地が目を引く。店の関係者に聞けば「製造元に出入りする銀行マンのために開発された最強の晴雨兼用傘」と、ますます気になる答え。商品について調べると、「傘の神様」と呼ばれたある九州人の経営哲学に触れた―。

 製造元は東京の洋傘メーカー「シューズセレクション」。長崎県出身の林秀信さんが上京後、飲食店経営などを経て1986年に設立した。当初はOEM(他社ブランド製品の製造)を手掛けたが、自社ブランド「ウォーターフロント」を立ち上げ、高品質の傘を安く売る戦略で販路を拡大。2000年発売の500円折り畳み傘の大ヒットで勢いを増し、年間販売2千万本規模で国内シェアトップを誇る日本一の企業へと成長した。社名から「本業は靴?」と思いがちだが、林さんの名前の「秀」に由来すると聞けば即納得だろう。

 同社によると、「銀行員の日傘」は03年に発売された。モチーフになったのは、林さんが「タケダ君」(仮称)と呼んでいた都銀の若手行員。雨の日も風の日も炎天下でも足繁く訪れる姿に、林さんは「タケダ君が喜んでくれる傘を作ろう」。その後、商品が完成し「タケダ君の日傘」と命名される予定だったが、発売前に彼が異動。現商品名に落ち着いた。

 スペックがすごい。生地は消防服を参考にアルミコーティングで遮光・遮熱効果を高め、紫外線は99%カット。黒い裏地で照り返しにも備える。耐水圧は通常の4倍。骨はFRP(繊維強化プラスチック)素材で、突風で傘が裏返っても壊れない。親骨は長さ65センチと大きめ。まさにフルスペックなのだが、価格は2千円(税抜き)と手頃なのだ。

 ただ、発売時は当てが外れたようだ。男性のハードユースを想定していたが、時期が早すぎた。男性の日傘がブームになり、「日傘男子」が新語・流行語大賞にノミネートされたのは10年後の13年だ。代わりに歓迎したのは女性。最強スペックに「美白」効果を期待する有名な女優やファッションモデルの人気を集めて認知度が高まり、ヒットしたらしい。
 

木村貴之(きむら・たかゆき)<br />
1994年から西日本新聞記者。趣味は釣りとエレキギターの手入れ。好きな映画は「椿三十郎」「八つ墓村」「ナチョ・リブレ」。音楽はレッド・ツェッペリン「貴方を愛し続けて」、寺井尚子「ジャズ・ワルツ」、里見洋と一番星「新盛り場ブルース」









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