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“自撮り”NGの名画「可愛いイレーヌ」

2018年06月24日 03時00分 更新

記者:木村貴之


  • 「至上の印象派展」で展示中のルノワール「可愛いイレーヌ」をスマホなどで撮影する来館者ら。ストロボ使用や自撮りなどは禁止なので要注意=福岡県太宰府市の九州国立博物館(撮影・木村貴之)

  • 来館者たちが「可愛いイレーヌ」の写真を添えてツイッターに投稿したメッセージ。口コミ効果が期待される(画像を一部加工)

  • 福岡県太宰府市の九州国立博物館。太宰府の緑に囲まれ、優雅な曲線をなすガラス張りの施設が悠然とたたずむ=6月中旬

 九州国立博物館(福岡県太宰府市)ですごい絵画展が開かれている。マネ、モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ…と「印象派」「ポスト印象派」と呼ばれた巨匠たちの傑作を集めた「至上の印象派展」。滅多にお目にかかれない名画ぞろいと聞き、目に焼き付けようと訪れて驚いた。目玉作品の一部がなんと撮影を許可されていたのだ。
 ⇒九州国立博物館の公式ホームページ

 スイスの実業家エミール・ビュールレ(1890-1956)が第2次世界大戦の戦中戦後に収集した64点(1点は彫刻)を展示。没後に設立された財団が管理するコレクションから厳選されたものだ。2008年、作品が所蔵される邸宅に武装窃盗団が押し入り、ゴッホやモネ、セザンヌ、ドガの絵画4点(被害総額175億円)を強奪する事件が起きたが、その後、すべて無事に奪還。その被害に遭った4点も並び、話題を集めている。

 撮影OKは、ルノワールの「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)」(1880年)とモネの「睡蓮の池、緑の反映」(1920-26年)。「可愛いイレーヌ」は、深い緑の茂みを背景に栗色の豊かな髪と色白の少女が光を浴びる姿が美しく、「絵画史上最強の美少女」とも。「睡蓮の池」は横幅が4メートルを超える大作で、「門外不出の最高傑作」と称された。ともに周りにはデジカメやスマートフォンを構えた若者らが群がり、空間にはシャッター音が響く。全体的に息をのんで鑑賞する来館者が多い中、この2カ所だけは何となく異質に映る。

 九博によると、05年の開館以来、常設以外の展示物の撮影許可は昨年の特別展「タイ〜仏の国の輝き」に続き2度目で、絵画展では初めて。印象派展は東京、福岡、名古屋の順に開催の巡回展だが、「可愛いイレーヌ」も撮影できるのは今のところ福岡だけだ。「展覧会を訪れた体験を形にしたい」という来館者の要望を受け、撮影OKを決めたらしい。

 そもそも、なぜ名画は撮影NGなのか。主な理由は作品の保護、著作権・所有権の侵害防止、館内の混雑・混乱の回避―にある。薄暗い展示室でのストロボ発光は作品の劣化を進め、三脚は凶器になりかねない。撮った写真の取り扱いにも警戒の目が光る。勝手に画集でも作られたら多大な不利益につながるだけに、性悪説的な対応を取らざるを得ないわけだ。


ルノワールの「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)」。モデルの少女、作品ともに数奇な運命をたどり、ビュールレの入手も因縁を感じさせる(一部、撮影・木村貴之)
木村貴之(きむら・たかゆき)<br />
1994年から西日本新聞記者。趣味は釣りとエレキギターの手入れ。好きな映画は「椿三十郎」「八つ墓村」「ナチョ・リブレ」。音楽はレッド・ツェッペリン「貴方を愛し続けて」、寺井尚子「ジャズ・ワルツ」、里見洋と一番星「新盛り場ブルース」









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