ようこそ ゲスト様

qBiz 西日本新聞経済電子版

東京コラム

一覧ページへ

飲料ロス削減の切り札? 「○年△月」にシフトする賞味期限表示 壁は昔ながらの”商慣習”

2018年06月28日 03時00分 更新

記者:塩塚未


  • 飲料コーナーでは、「○年△月」と「○年△月□日」の賞味期限の商品が隣り合うこともある

  • 塩塚 未(しおつか・ひでみ)
    北九州市出身、1998年入社。好きなことは、何もせずぼーっと過ごすこと。北九州西支局、編集センター、別府支局、釜山駐在、編集センターを経て、2016年9月から東京支社。現在は農水省を担当。

 スーパーの飲料コーナーに行き、並んだペットボトル飲料の賞味期限表示に注目すると、「○年△月□日」と「○年△月」の、2種類が混在していることに気が付くはずだ。

 近年増えているのは月刻みの「○年△月」のスタイル。実はこの表示を採用すると、食べられるのに廃棄される「食品ロス」の削減につながるのだという。どうしてだろうか。

 まずは賞味期限と食品ロスについて。国の推計では、2015年度の国内の食品ロスは646万トンに上り、メーカーが廃棄する飲料も含まれるという。そして賞味期限とは「おいしく食べることのできる期限」のことで、「期限を過ぎたら食べない方がいい」ことを表す消費期限とは別の表示方法だ。賞味期限が3カ月以上の商品は「○年△月」の表示が認められていて、ペットボトル飲料も多くが当てはまる。

 その上で、なぜ表示を一日刻みから月刻みに変更すると食品ロスが減るのか。背景には、小売店の商慣習があるという。納入しようとした商品が、前日に納入した分よりも賞味期限が短くなる「日付後退」の場合、その商品の納入を認めないというものだ。

 例えば、ある日仕入れた商品の賞味期限が<10月31日>だったとする。その場合、翌日以降は賞味期限10月30日以前の商品は「日付が後退する」ことを理由に受け付けないというものだ。

 この商慣習のため、メーカー側は、何らかの原因で返品を受けた場合、その商品の再出荷先を見つけることが難しくなってしまう。結果として、賞味期限の日付だけが問題になって商品が廃棄されることになってしまう。

 だが、「○年△月」までの表示を採用していれば、1カ月間に作られた商品の賞味期限が同じになるため「日付後退」が発生せず、再出荷がしやすくなるというわけだ。

 農林水産省が支援し食品業界が参加するワーキングチームの報告によると、キリンビバレッジによる検証では「○年△月□日」表示の商品では再出荷率は73%だったが、「○年△月」表示では88%になったという。表示の仕方を変えるだけで、再出荷率に10ポイントほどの差が出ている。報告ではさらに、「○年△月」表示の導入などで年間250トン程度の食品ロス削減につながっていると推察している。

 この問題に詳しい流通経済研究所の石川友博主任研究員は「企業側には別のメリットもある」と指摘する。

 石川さんによると、「○年△月□日」表示では、メーカー側は日付ごとに細分化して在庫管理を行う必要があるが、「○年△月」表示では月ごとまとまった管理で済むため、物流現場での作業効率化や食品保管、配送にかかるコスト削減などが見込めるという。小売店側も商品が届くたびに、陳列をやり直す手間を省くことができる。

 こうしたメリットを享受できることで「○年△月」表示は広がっている。アサヒ飲料は4月に「○年△月」表示の商品を80品目増やした。同社は「食品ロス削減だけでなく、環境に配慮しているという姿勢も示せる」と説明する。サントリー食品インターナショナルも18年末までに商品の9割を「○年△月」表示にする方針だ。

 表示を変更するだけで、食品ロスが減るというのは、効率的な取り組みと言えそうだ。いろいろな飲み物が並ぶ棚を眺めるのは楽しい。今後は「○年△月」表示の割合をチェックするという視点も加え、飲料コーナーをのぞいてみたい。










コラム qBizコラムの最新記事



そもそもqbizとは?

Recommend

ランキング

Recommend

特集 最新記事

コラム 最新記事