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元記者ピロシの醤油屋今日談

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「平成」が終わろうとしているというのに… 醤油屋今日談(13)

2018年06月29日 03時00分 更新

記者:川崎弘氏


  • 永遠に来ない「平成31年12月8日」が刻印された醤油。トホホ…

  • 川崎弘(かわさき・ひろし)氏
    1980年、佐賀市生まれ。2003〜17年、西日本新聞の記者として事件、経済分野などの取材・執筆を手掛ける。17年10月、妻の実家である大分県日田市の醤油・味噌製造会社「まるはら」に転職。14年ぶりに新入社員に。ロック、カレー、日本酒好き。



 あと10カ月で平成が終わる。新元号に移行することが決まってから半年以上がたつが、うちの会社では、今になって「とある問題」に直面している。

 店頭に並ぶ食品には、たいてい賞味期限が表示されている(最近、記載不要の食品もあると知った)。わが社でも各商品のラベルやふたに印字をしているが、醤油は長いもので製造日から1年半を賞味期限としている。

 問題の発端は、うちの会社がほとんどの商品で「平成〇年」という表記を使っていることだ。

 政府が2019年5月1日に元号を改めると発表したのが、昨年12月1日。改元までの期間がちょうど1年半なので、その日のうちに賞味期限の表記をどうするかを社長に相談したのだが、「そのうち変えるから、とりあえずこのままで」との返事。僕も「まぁ近いうちに対応してもらえるだろう」と、高を括っていたのが間違いだった。

 半年たった今も、表記は「平成〇年」のままである。

 新元号が分からない中で「01年〇月〇日」と記載するのは気が引けるので、西暦を導入すれば済む話ではある。実際、海外に輸出する一部の商品には西暦を導入しているので、難しいことではない。スーパーの店頭で調べてみたら、ほぼすべての食品メーカーが西暦を導入していた。

 社長には社長なりの考えがあったようだ。いま、食品業界では「〇年〇月〇日」としていた賞味期限の表示を「〇年〇月」に改める動きが出ている。法律上、作って3カ月以上もつものは、年月だけでよいのだが、なぜか「日」まで入れた表示の方が多い。

 「日」を省くことで、流通業界では在庫管理の手間が省けるらしく、うちにも一部の取引先から変えてほしいとの要請が来ている。考えてみれば、1年半もつものが、1日過ぎただけでおいしく食べられなくなる、というのも不自然な話。フードロスを減らせるなら、社会的な意義もある。

 どうせ変えるなら「西暦と年月の表記を一気に」と社長は考えていたようだ。しかし、ここで新たな問題が勃発した。

 万が一、異物混入などの事故が起きた場合、年月日表示なら日単位の回収ですむが、年月表示だと、その月に生産した商品をすべて回収しないといけなくなる。これが食品メーカーにとっていかに恐ろしいことか、お分かりいただけると思う。

 対策として、製造日を特定できるように、賞味期限とは別にロットナンバーを印字するのが一般的だ。アルファベットや数字を暗号のように並べたアレだ。
 
 ただ、わが社では未体験。どうやってロットナンバーを振るか試行錯誤を続けるうちに、徒らに時間が流れ、平成表記の商品の出荷が続いているというわけだ。

 7月に入ると、とうとう1年半後の「平成32年」の商品が登場してしまう。こりゃさすがにまずいと思い、先日、あらためて朝礼の場で質問すると、社長は「じゃあ7月から変えよっか」と一言。朝令暮改ならぬ”朝礼即改”。社員一同、ずっこけそうになりながらも、なんとか「平成32年までもつ醤油」は幻に終わりそうである。

 さりとて、個人的には、日本の伝統的な食材である醤油や味噌には、日本ならではの元号表記の方が似合うと思っている。お客さまに正しく情報を伝えるため、新しい元号が世間に馴染むまでの間は西暦表示でしのぐとしても、いずれは元に戻してもいいのではないか、という気がしている。










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