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「財布よりスマホが大事」 加速する中国のキャッシュレス 趙さんの瀋陽来信(3)

2018年06月29日 10時00分 更新

記者:チョウ・イーリン氏


  • 自転車シェアリングサービスの「Mobike」、ウィチャットペイで「Mobike」の車体に表示されるQRコードをスキャンすることによって、解錠・乗車が可能に。料金はウィチャットペイからの自動引き落としだ

 (1)の答えは「没収された偽札の総額」(2014年)だ。

 残念ながら、中国ではいまだに偽札が横行している。百貨店など大型商業施設の場合、会計場所に100元(一番大きい額面の紙幣)を識別できる機械が置いてあるが、小さいなお店や屋台ではあまり普及していないため偽札を防ぎにくく、被害が大きくなる。

 (2)は中国と北米の、人口10万人当たりの銀行ATMの数(2014年)。比べてみると、北米では222台があるのに、中国では55台しかない。

 中国では、1985年に中国銀行の珠海支店が初のクレジットカードを発行した。2016年までに約4億6000万枚が発行されたが、中国の金融産業は先進国ほど発達しておらず、その普及率は低いままである。

 つまり、現金への不信と、クレジットカードの低普及率。これが、中国が一気にキャッシュレスに向けてジャンプできた理由と言える。

 モバイルペイメントは、何よりコストメリットが大きい。加盟店にとっても個人にとっても、スマホ決済を導入・使用するコストは安い。決済にかかる手数料は加盟店で0.6%、個人間送金では無料だ。

 スマホ決済が普及し、キャッシュレス社会に変貌しつつある中国。その結果、ウィチャットペイを開発したテンセントと、中国人民大学との共同調査によると、「スマホがあれば、財布を持つ必要がないと考える人は8割超」という結果が出ている。財布を持たない人が増え続けているのだ。

◆   ◆   ◆

 瀋陽だけではなく、都市部に住む多くの中国人にとって当たり前になった「キャッシュレス生活」。スマホと共にする一日の行動パターンが興味深い。特徴的な場面は――。

 午前7:00 通勤・通学
職場や学校までの「残りの1キロメートル」にどのような手段を使うか。朝の1分はとても貴重だ。よく見かけるパターンは、タクシーを呼ぶアプリ「滴滴出行(Didi)」の利用や、タクシーないしライドシェアされる他人の自家用車の利用、そしてほかには、自転車シェアリングサービスの「摩拝単車(Mobike)」や「ofo」でペダルを踏みしめるか。選択肢は多く、人々は自分に合ったものを選び、目的地へと向かう。

 正午 ランチタイム
お店には足を運ばない。「よし、今日はこれを食べよう」。話しかける相手は「人」ではなく、出前アプリ「餓了嗎(Ele)」上のメニュー選択画面。そして街には、注文を受けたデリバリーのドライバーたちが忙しそうに届け先へと向かう。

 午後10:00 帰宅後
睡眠までの自由時間。スマホの画面でオンラインショッピングを楽しむ。


瀋陽の住宅街にある売店「ミルクバー」。生活に密着した場所でもQRコードが出されている
道端の焼き鳥の屋台にもQRコード。偽札を受ける心配なし、お金のやり取りもなし、勘定がよりスムーズになる
さあ通勤時。今日はこの自転車に乗って行ってきます!
趙 ●琳(チョウ・イーリン)氏<br />
1979年中国・瀋陽生まれ。大学卒業後の2002年に来日し、2008年に東工大院社会理工学研究科を修了。博士(学術)。現在は、富士通総研経済研究所の上級研究員。好きな言葉は、老子の言葉「千里之行、始于足下」(千里の道も一歩から)。趣味は、休日に家族と気軽におしゃべりをしながらの山登り。<br />
※●は「偉」のにんべんが「王」へん









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