天を仰げばオリオン座や北斗七星も浮かぶ満天の星。そこにプロのミュージシャンの洗練された歌声や演奏が響き渡り、演奏者の姿も天空に浮き上がる―。6月末、福岡市科学館(中央区六本松)であった音楽イベント。まるで宇宙空間を漂いながら“異次元”のライブを満喫しているような気分になり、「半端ないって!」とうなるほど感動した。
舞台は、九州最大級のプラネタリウムを備えた「ドームシアター」だ。投影ドームは直径25メートル、天頂部の高さは最大15・5メートル。リクライニング式の220席が並ぶ中央に「8K」相当の超高精細映像を映し出す最新型投影機があり、壁面や床にサラウンドスピーカー。今回のライブは、「STARRY NIGHT JAM(スターリーナイト・ジャム)」と銘打ち、ここで定期的に催される夜間イベントの一幕だった。
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片隅のステージに立ったのは、福岡市早良区出身の歌手fumika(フミカ)さんと、福岡を拠点に活動するアコースティックトリオ「ミサンガ」の2組。
ミサンガが、認知症の家族に贈る話題曲「はじめまして、ばぁちゃん。」を演奏すると、天空にはスケッチブックを手にした市民が次々に登場するプロモーションビデオが映り、「おばあちゃん大好き。長生きしてね」―と家族に手書きのメッセージを綴(つづ)る。fumikaさんは、パラパラ漫画が得意なお笑い芸人「鉄拳」の代表作「振り子」に合わせ、ヒット曲「Endless Road(エンドレス・ロード)」を熱唱。男女の半生を描くドラマで世の「無常」を嘆くパラパラ漫画を、繊細で潤いのある彼女の歌声が際立たせる。映像の反射光が照らす満員の客席は、温かい笑顔を浮かべたり、感動の涙を流したり―。私も思わず号泣してしまった。