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温泉に無限の可能性 「世界温泉地サミット」採録

2018年07月22日 03時00分 更新

記者:後藤薫平


  • 世界最大の露天風呂とされる「ブルーラグーン」

  • ジェローム・フリポ氏(フランス・ヴィシー)

  • アーサ・ブリンヨルフスドッティル氏(アイスランド・グリンダヴィーク)

  • マッシモ・サビオン氏(イタリア・アバノ)

 泥を使った医療や地熱発電所の副産物利用…。温泉には、もっといろんな価値やその生かし方がある。世界16カ国、国内75自治体などから約千人が別府市に集い、温泉の活用法を探った「世界温泉地サミット」(5月)では、そんな無限の可能性を感じさせる議論が交わされた。海外からはフランス、イタリア、アイスランドの各代表者が、観光や医療面での活用事例を報告。示唆に富む各国の報告要旨をまとめた。

フランス・観光と治療で長期滞在

 ヴィシーはフランス有数の温泉保養地で、観光と温泉療法の街だ。観光面では、街中の歩いて行ける範囲に、アールデコやアールヌーボー様式の建物があり、オペラの上演、カジノ、競馬、ゴルフ場がある。年間60万人が訪れ、このうち30万人が、これらの観光を楽しみながら、1週間から3週間滞在している。

 滞在者は、ホテルに泊まり、温泉施設に通う。温泉では入浴だけでなく、マッサージやサウナ、泥のパックが利用できる。医師や理学療法士が常駐しており、処方箋を得て、治療やリハビリをすれば大きな効果がある。治療には保険も適用されている。

 医師が勧めるのが、温泉水を飲むことだ。ミネラルが豊富で、▽消化を助ける▽疲れを癒やす▽筋肉のけいれんを緩和▽美肌−の効果がある。ヴィシーの温泉水はサプリメントと考えられている。温泉水は、日本を含めた世界80カ国で販売もされている。

 ヴィシーの温泉トリートメントのコンセプトは「特別な治療を、世界のあなた一人のために行う」。職員ら一人一人がセラピストになり、病気の予防、治療、リハビリ、美容促進を提供し、その合間に観光も楽しんでもらう考え方だ。

アイスランド・地熱発電の副産物利用

 世界最大の露天風呂ブルーラグーンは溶岩でできた平野にある。1976年に地熱発電所が設置され、その暖かい排水がブルーラグーンの温泉になっている。39〜40度とぬるめのお湯。乳白色はシリカ(ケイ素)の沈殿物によるもので、美肌にも効果がある。

 ブルーラグーンは調査、開発、デザインの三つの考え方で創造されてきた。シリカや温泉水の皮膚病への有効性などこれまで20以上の論文が発表され、化粧品など主にスキンケア商品を開発し、提供している。

 ブルーラグーンで提供するサービス、商品の素材はすべて発電所の排出物の再利用であり、環境に優しい手法だ。そして、新しい価値を創造するにはデザインが重要。デザイナーや建築家が、環境への調和を大事にして施設や商品をデザインし、来訪者がブルーラグーンに対して感じる価値を高めている。売り出していくための重要な戦略だ。

 ブルーラグーンは人生を変える場所の世界100選の一つに数えられ、来訪者が増え続けている。世界的な観光地になった手法も、注目されている。新たなホテルやヨガも取り入れようと計画しており、今後も来訪者に思い出に残る経験ができる場を提供していく。

イタリア・医療要員がホテル常駐

 イタリアのアバノ・モンテグロットは、泥を使った治療、美容法が特徴で欧州中から利用客が訪れる。近くの山から採れる粘土を、アルプス山脈から流れてきている温泉水の池に入れて泥を作る。塩素やヨウ素などミネラルを含んだ温泉水に2、3カ月粘土を入れ、その間に豊富な有効成分を含んだ泥ができあがる。

 アバノ・モンテグロットには、温泉を備えた120のホテルがあり、医師など専門スタッフの雇用が義務付けられている。泥を使った治療は、特にリウマチに効果がある。約40度の泥を10回にわたって患部に塗り、その後、入浴。これで1回分の治療だ。このほかには、温泉水を噴霧器で吹きつける方法もある。保険に基づく治療であり、市民は無料。ドイツやフランスの保険も適用されるよう連携している。アバノ・モンテグロットでは治療の提供に重点を置いており、その額は1億ユーロ(約126億円)に上る。

 人間を癒やし、幸福感をもたらす温泉には食事への利用、治療、保養、観光など多くの活用法があるが、現代は、すべてが要求される時代になった。泥を使った伝統文化を維持しながら、温泉の活用を今以上に模索している。










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