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【あなたの特命取材班】発達障害などの児童生徒対象 「通級指導」送迎大変 他校へ往復1時間半 福岡県内 在籍校に教員訪問4%

2018年07月23日 03時00分 更新

記者:吉田真紀


 発達障害などの児童生徒が通常学級に在籍しながら特別な指導を受けられる「通級指導教室」。小学生の息子を通わせる母親から「往復だけで1時間半以上かけて別の小学校まで送迎しています」と訴える声が特命取材班に届いた。知人の子どもの場合は、担当の教諭が在籍校に来てくれるのだという。どういう事情があるのか。

 声を寄せたのは福岡市在住のさゆりさん(40代、仮名)。「息子が幼く、落ち着きがなくて…」。担任教諭と相談し、今春から通級指導を受けることに。福岡県内の別の自治体に暮らす知人の子と同じように在籍校で受けられると思っていたが、福岡市教育委員会は、在籍校に通級指導教室が設置されていない場合、児童が設置校に通う方式だった。

 週1回、さゆりさんがハンドルを握り、在籍校の授業を抜けた息子を設置校に送り届ける生活が始まった。片道50分。計90分の指導後、在籍校へと連れて戻るのに3時間以上を費やす。

 復帰するつもりだった職場では、勤務中に長時間抜けることは難しく、仕事を諦めた。

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 文部科学省によると、通級指導は1993年度から小中学校で始まった。発達障害などに対する保護者の意識の高まりを背景に、指導を受ける児童生徒は増えており、2017年度は10万8946人と、93年度の8倍を超えた。

 問題は、全ての学校に通級指導教室が設置されているわけではないこと。岡山大大学院の吉利宗久准教授(特別支援教育)は、さゆりさんのケースを「全国で起きている、通級の最大の課題」と指摘する。

 在籍校に通級指導教室が未設置の場合、設置校に子どもが通う「他校通級」、在籍校に教員が出向く「巡回指導」がある。

 本人や保護者にとっては巡回指導は負担が軽いが、文科省によれば「そもそも財政や人員確保の問題から設置数自体が不十分な自治体もある」。通級指導の教員定数は対象児童生徒13人に対し1人。「子どもが離れた学校に分散している場合など、巡回は難しい」(文科省)。福岡県の60市町村のうち、巡回を一部でも導入するのは17年度は14市町。児童生徒計3118人の4%にとどまる。

 他校に通う場合、児童1人での通学が難しければ保護者の送迎が必要になる。共働き家庭が増える中、通級を断念している人も少なくないとみられる。

 巡回指導を行っていない福岡市教委は、学校に子どもを集める利点を「複数の教員が協力でき、指導法も多彩になる。保護者間でネットワークもできる」と強調する。当初、巡回指導も行っていたという北九州市は指導する児童生徒の増加に伴い、取りやめた。「他校通級は限られた教員でより多くのニーズに応えられる」と話す。

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 東京都が先進的な取り組みをしていると聞き、現場を訪ねた。

 「野球好きな人?」「は〜い、大好き」。5月中旬、東京都目黒区の油面小では、徒歩圏内の不動小から訪れた教諭2人が、発達障害の児童たちを指導していた。3時限目は一緒に1年生3人を集団指導。4時間目は別教室で3、5年生の個別指導をする。本年度、都内の1200超の全公立小学校に設置が完了した「特別支援教室」だ。

 発達障害の子どもが、在籍校で指導を受けられるよう12年度から全校設置を推進。拠点校を設け、そこから教員が効率的に各校に出向く仕組みをつくった。

 目黒区では拠点7校に所属する教員が全22校を巡回する。田中真弓教諭は「保護者の送迎がいらないのが最大の利点。在籍校の担任教諭と毎週顔を合わせるため連携しやすい」と言う。

 吉利准教授は「子どもや保護者を指導の形態に合わせるのではなく、ニーズに合った指導の形にしていく視点が重要だ」と話す。










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