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お達者 有田の「1000歳」大イチョウ 樹木医「健康状態はまずまず」

2018年08月01日 13時59分 更新

記者:平原奈央子


  • 大イチョウに登って診断作業をする樹木医たち

  • 健康診断の日の大イチョウ。高い部分の枝数が減り葉が小さくなっていることが確認された

  • 2016年5月、池田さん宅に大枝が落下して屋根を突き破った

  • 1963年の大イチョウ。そばに保育園があり、子どもたちの遊び場になっていた

  • 1935年の大イチョウ。現在よりも葉が茂っている

 佐賀県有田町泉山にそびえ立つ、樹齢千年といわれる国指定天然記念物の大イチョウが7月、樹木医による「健康診断」を受けた。秋には黄金に紅葉する名木だが、近年は落下した枝で民家が壊れる事故も相次いでいる。文化庁と町文化財課が本格的な対策に乗り出した大イチョウの保護と共生の在り方を探った。

枝落下に町が対策、保護・共生探る

 日本最大級の規模を誇る大イチョウは高さ約35メートル、根回り約12メートル、枝張り約31メートルの雄木。1926年に国天然記念物に指定された。

 今回の診断は国の「天然記念物再生事業」の一環で、予算は800万円(国50%、町32%、県18%負担)。専門技術を持つNPO法人「自然への奉仕者 樹木医協力会」(横浜市)の樹木医5人が当たった。

 まずは小型無人機ドローンで全体像を空撮。ボーリング調査で土壌の状態も分析した。樹木医たちは木に登って16カ所に電極を付け、さまざまな周波数で震動を与えながら内部の状態を確かめた。

 代表樹木医の安部鉄雄さん(60)によると、健康状態は「5段階の3程度」。高さ4・3メートルの辺りに大きな空洞があるほか、20メートル以上の場所では枝数が減り葉が小さくなっていた。土壌の真砂(まさ)土は「最善」ではないものの、水はけは良好で根腐れはなかったという。「急な土壌改良は控え、現状維持プラスアルファで対策すべきだ」と診断した。

 天高く伸びる大イチョウは、古くから有田のランドマークだった。古窯に囲まれた泉山弁財天神社の境内に立ち、江戸時代には佐賀藩が皿山の人と陶磁器の出入りを取り締まった「口屋(くちや)番所」が置かれた。文献では1731年の物語「皿山雀(さらやますずめ)」に登場する。有田のスズメたちが名所風俗を紹介する風流な物語で〈大キ成(なる)木有リ〉と大イチョウが舞台になっている。

 周辺はかつて「年木山(としきやま)」と呼ばれ、現在も「年木谷(としきだに)」の地名が残る。町文化財課の村上伸之課長(58)によれば「年を取った木の意」だという。昭和期にはそばに保育園があり、木陰は園児の遊び場だった。

 本格的な調査に至った背景には、相次ぐ枝の落下事故があった。2016年5月、イチョウの木陰にかかる池田久男さん(66)宅に長さ2メートル以上の大枝が落下し、屋根を突き破った。先月の台風でも枝が落ちて瓦が破損したという。池田さん宅は築約200年の国重要伝統的建造物で、木とともに下の家も国の管理対象というまれな状況にある。

 「落ち葉も絶えず苦労も多いが、1828年にあった大火事(文政の大火)から家を守ってもらったこともあり、代々感謝を忘れずにいます」と池田さん。イチョウの木は燃えにくく、町を焼き尽くした大火の中でも池田さん宅は燃え残ったという。

 事故防止のため樹木医は枝を樹脂製のケーブルで固定する方法を提案。今月にも町が施工する。

 診断作業には他に県内の樹木医3人も加わっており、今後は地元の「主治医」として見守っていく。大樹のますますの長寿と安全を願いつつ、近隣民家については移動を含めた検討が続けられる予定だ。

 調査に携わった日本の樹木診断の第一人者、堀大才さん(71)は「根元から分かれずに単木でこれだけの大きさは見事。人間に例えれば100歳近いご老人が、かくしゃくとして立っていると言える」と巨木を見上げた。










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