ようこそ ゲスト様

qBiz 西日本新聞経済電子版

【あなたの特命取材班】障害者施設切られる冷房 熱帯夜続きでも「午後9時半まで」 福岡近郊「熱中症が心配」

2018年09月02日 03時00分 更新

記者:本田彩子、久知邦、山田育代、坂本信博



  • 記録的猛暑の中、熱中症対策にエアコンは有効だが、障害者施設の対応には温度差もある(撮影・帖地洸平)

 岐阜市の病院で、エアコンが故障した部屋に入院していた患者5人が相次いで死亡する問題が発覚して2日で1週間。福岡市近郊の障害者支援施設に親族が入所中という女性から、特命取材班にSOSが届いた。「施設の冷房が午後9時半から朝まで消される。半身不随で感覚が鈍く体も不自由なので、熱中症が心配です」。こうした施設の暑さ対策はどうなっているのか。

 女性が情報を寄せた施設は福岡県が設置主体で、社会福祉法人に経営を委託している。

 女性によると、親族は脳梗塞で倒れ、リハビリのために入所している。この8月、夜に冷房がついたことは一度もなく、夜間は「送風」に設定されている。「熱い風が吹いている。窓を開けても風通しが悪くて涼しくならない。相部屋の人も『暑い』と言っており、冬場は寒くても暖房が切られるので毛布を着込まないといけない、と聞いた」

 冷房を入れるよう施設側に頼んではと思うが、女性の親族は「やっと入れた施設に感謝している。苦情のようなことを言いたくない」と話しているという。

 施設がある自治体に気象台の観測地点がないため、近隣である福岡市の8月の気温を調べてみた。午後11時の月間平均気温は29度。夜の最低気温が25度以上の熱帯夜でなかったのは1日だけだった。

 施設に取材した。担当者は「確かに午後9時半〜午前7時半は冷房は効いていない」と認めた上で「窓は網戸付きで暑ければいつでも開けられる。扇風機の持ち込みも可能」と説明。夜間に冷房を切る理由を聞くと「以前からそう運用している。この夏も苦情などはなく、暑さで体調を崩した人もいない」と強調した。

      ■

 九州各地の障害者支援施設に尋ねてみると、対応には「温度差」が浮かぶ。

 熊本県社会福祉事業団の「県身体障がい者能力開発センター」(熊本市)は「毎日午前6時半から午前2時までエアコンをつけており、それ以降も暑ければ午前4時まで稼働する」。

 鹿児島県社会福祉事業団の「ゆすの里」(同県日置市)では「常時エアコンをつけ、湿度や温度に応じて職員が調整する」という。

 長崎県佐世保市の施設は昼夜問わず廊下だけ冷房を入れ、居室は入所者の希望に応じてつけたり、部屋の湿度や温度によって職員が調整したりしている。担当者は「1〜2人部屋で狭いため、冷えすぎて風邪をひく人もいる」と室温調整の難しさを語った。

 一方で、経済事情もちらつく。ある障害者施設の職員は「経営が苦しく、電気代節約のため夜間はなるべくエアコンを切るよう指示された」と打ち明けた。

      ■

 空調管理に関する国の基準はないのか。

 厚生労働省によると、障害者自立支援法に基づく通知で「空調設備等により施設内の適温の確保に努めること」と定めている。同省障害福祉課は「エアコン稼働などは施設の判断」とした上で、「利用者の状況を踏まえて空調など適切な生活環境を支援するのは、基本の基本」と指摘した。

 福祉サービスの苦情を受け付ける福岡県社会福祉協議会の運営適正化委員会の担当者は「施設利用者や家族、職員から『エアコンの効きが悪い。蒸し暑い』という相談がこの夏、数件あった。それでも夜間にエアコンを切るという施設は聞いたことがない」という。

 気象庁が「命の危険がある災害」と表現した猛暑。意思表示が難しい障害者もいるだけに、家族の心配は尽きない。

 女性が情報を寄せた冒頭の施設について、福岡県障がい福祉課は、本紙の取材をきっかけに「熱中症などの事故が起きないよう、必要に応じて冷房をつけるよう指導した」としている。










特集 qレポートの最新記事



そもそもqbizとは?

Recommend

ランキング

Recommend

特集 最新記事

コラム 最新記事