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福岡の「細かすぎる音風景」 他の追随を許さない、圧倒的ローカルに学ぶ

2018年09月09日 03時00分 更新

記者:福間慎一


  • 前田さんにレコーダーを構えて録音の様子を再現してもらった。周囲から見ると、「何かの調査」には見えるが、何をしているのかはわからないだろう

  • 前田さんが働くPAルーム。そこに「自然」はない

  • 福間慎一(ふくま・しんいち)
    福岡市生まれ、2001年入社。文化部、長崎総局、本社報道センターなどで記者。1年間のヤフー出向を経て17年9月からqBiz編集長。特技は居酒屋のメニューを指1本でくるくる回すこと。

 サウンドデザイナーとして25年のキャリアを重ねてきた前田さん。収録には市販のレコーダーを使っている。大事なのは機材ではなく、「この場所を象徴する音は何か」の見極め。そして、その音を最も効果的に収めるための録音機材の「場所」と「向き」だ。

 百道浜の海岸で、収録を再現してもらった。前田さん、レコーダーを手に持って立ち、動かない。音はどれも数分間に及ぶ。この作業を街中でも、山奥の滝でも繰り返してきたというのか…。

 さすがプロだと感じ入っていると、前田さんも「そりゃものすごく長く感じますよ」。みだりに動くと音が変わるから、始めると動けない。それだけ、最初に決める場所と向きが重要になる。

 苦難もある。佐賀県境の糸島市内の千寿院の滝では、徒歩での帰りで道を見失い、危うく遭難しかけた。そして文字通り「天敵」になるのが飛行機。全国屈指の混雑で知られる福岡空港への航路が上空を走る東区方面では何度も泣かされた。

◇◇◇◇

 このラインナップの特徴は滝や海岸といった「自然」が多い。なぜだろう。その答えは、前田さんの仕事場にあった。

 音を整えたり、映像に音楽や効果音を載せたりするMA(マルチオーディオ)ルームには窓はなく、晴れか曇りか、昼か夜かも分からない。「そ、外に出たい…」。そんな思いを前田さんが募らせたのは、当然かもしれない。

 マストにロープが当たる音が心地よい小戸ヨットハーバー。「通りゃんせ」のメロディーがシックに響く天神の交差点。犬の吠え声が遠くに聞こえる愛宕神社。「福岡のサウンドスケープ」という唯一無二のコンテンツの真骨頂は、やはり前出の「福重田んぼ」だろう。その最大の魅力は、他の追随を許さないニッチさにある。

 VSQは創業40年を迎えた今年、「ビデオ・ステーション・キュー」から、広く知られてきたその略称に社名そのものを改めた。前田さんは「何でもない音を採るのが一番難しい」と話す。確かに、事件でも事故でもない「普通の日」を記録するのは、映像でも文字でも簡単ではない。

 福重の田んぼに並ぶインパクトを持つ「伊崎漁港テトラポット」の、波が小さくブロック跳ね返る音を聞きながら考えた。表現方法は違えども、私も福岡を舞台にした老舗メディアの端くれ。この視点を見失ってはいけない。


効果音フリー素材「福岡1」は http://www.vsq.co.jp/soundeffect/fukuoka/
※「福重田んぼ」は16番目。
「福岡2」は http://www.vsq.co.jp/soundeffect/fukuoka2/



<次ページは:細かすぎる「福岡の効果音」おすすめの聴きどころ>

ウインドジャマー(風音よけ)を付けたレコーダー。福岡にはどんな音が流れているのか
効果音フリー素材のページ。まさかの「福岡」のカテゴリに目が点になる









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