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九州を揺るがす「13兆円問題」

2018年09月19日 03時00分 更新

記者:井崎圭


  • 井崎圭(いざき・けい)2005年4月入社。約12年の会社生活のうち約8年は北九州管内での勤務。社内の一部から「北九州専属社員」とも呼ばれている。黒崎祇園山笠に参加するなど北九州には馴染みが深い。1児のパパ。

 おどろおどろしいタイトルだが、ぜひ”13兆円問題”を紹介させてほしい。

 13兆円――。この途方もない額のお金(資産)が九州から流出する可能性があるという。

 その原因は「相続」だ。

 三井住友信託銀行の試算によると、地方の親から都市部の子へ相続が進んだ場合、今後20年〜25年で九州・沖縄の家計金融資産(64兆4千億円)の2割に当たる13兆円が域外に流出するという。

 その13兆円は、具体的にはどこへ行くのか。東京圏(東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県)に6兆5千億円が、大阪圏(大阪府・京都府・兵庫県)には2兆5千億円が、それぞれ流入する。

 相続に伴う多額の資産流出について、こんな話を聞いたことがある。

 九州内に、後継者問題に悩む会社(所在地と業種は伏せさせていただく)があった。創業した夫妻には子どもがなく、後継と目した人間も急逝。事業継承を目的に会社の株式を数十億円で売却した。その後、夫が先に亡くなり、後で妻が亡くなった。

 莫大な遺産はどうなったか。実は妻は再婚で、別居している実子が1人いた。その人物が資産を相続。あっと言う間に多額のお金が出て行ったそうだ。

 地方の資産が減少したら何が起こるか。

 まず地方銀行や地方の信用金庫の預金が減る。これは預金を根拠に企業にお金を貸す金融機関にとっては貸出金の減少を意味する。

 つまり、お金を貸し出して企業を育てる金融機関の能力が落ちてしまうのだ。地場企業が資金繰りに困ったり、金融機関が起業家の芽を育てられなかったりすれば、地域経済が衰退に向かうのは自明だろう。

 この流出問題をどう対応すべきか。佐賀銀行(佐賀市)は10月から「遺言代用信託」の商品の販売を始める。相続時に積極的に関わることで、都市部にいる子どもとも良好な関係を築き、佐銀口座での預金継続を促したいという。

 ただ、それだけで流出が抑制できるというわけではない。財産権は日本国憲法で保障されている。所有する財産をどうしようと基本的には自由。「相続した預金は、同じ金融機関の口座に」と縛るのは、なかなか難しいところだ。

 しかし、このままでは地方衰退の懸念は消えない。自民党総裁選では安倍晋三首相、石破茂元幹事長とも「地方創生」を声高に叫んでいるが、この問題こそ政治の出番ではないだろうか。

 地域衰退を食い止めるには、相続に伴う地域間の資産移動についても一定のルール作りが必要だと思う。安倍氏、石破氏に限らず、地方創生に本気な政治家に、是非とも国会で議論してほしい。










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