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旅籠のにぎわい、もう一度 福岡県小郡市「旧松崎油屋」が来年3月復元完成 企画展など開催中

2018年09月24日 03時00分 更新

記者:大矢和世


  • 旧松崎旅籠油屋。中油屋(左)は既に復元し、油屋(右)は修復工事が進む

  • 座敷の床下で見つかった「胞衣壺(えなつぼ)」(右下)。「胎盤を入れて埋め、子どもの成長を願った昔の風習」と磯部冨士夫理事長は語る

  • 小郡市埋蔵文化財調査センターで公開されているゾウの落書き(下)と大工の名前が書かれた建築部材

 福岡県小郡市東部の松崎地区にある市指定有形文化財「旧松崎旅籠(はたご)油屋」。旧薩摩街道に面し、江戸期に宿場町「松崎宿」として栄えた地の名残をとどめる。2009年から順次進められてきた修復復元工事は来年3月、完成予定だ。完成を前に、市内で企画展が開かれている。

 油屋は、主屋の「油屋」と座敷の「中油屋」の2棟から成る。中油屋の復元は2015年に終わり、今は油屋の工事が進む。「30年近くかかったけど、よくここまで来たと思いますよ」。油屋の管理運営を担うNPO法人小郡市の歴史を守る会の磯部冨士夫理事長(79)は、工事作業を見守りながら語る。

 昭和初期ごろまで宿屋だった油屋は後年、大刀洗陸軍飛行場の宿舎や芝居小屋、食堂、電器店などに転用され改築されてきた。平成初めごろは草木にうずもれ、廃屋同然だったという。1991年の台風で屋根が壊れ、解体話も持ち上がった。だが地域住民を中心に保存運動が活発化し、署名や募金が集まった。96年の建築学的調査で「九州では貴重な旅籠建築」とされ、2001年に市文化財に指定。幕末期の姿に復元するため、解体発掘調査と工事が進んできた。

 調査の過程で分かったことは、市埋蔵文化財調査センターの企画展「薩摩街道松崎宿と旅籠油屋」で紹介されている。建築部材に残された墨書きから、中油屋は嘉永2(1849)年に建てられ、油屋は18世紀後半に建ったものが文久元(1861)年〜慶応元(1865)年に大幅改築されたとみられるという。復元工事に携わった「文化財建造物保存技術協会」(東京)の下条幸紀さん(39)は「中興の祖と言われる油屋喜平の時代に大改築したのではないか。建築材には当時の情報が詰まっている」と語る。

 興味深い墨書きは他にも見つかった。ひょろりと伸びた長い鼻、突き出た牙。どうやらゾウの落書きらしい。「1728年、長崎の出島にゾウ2頭が上陸し、将軍に献上された。ゾウは街道を歩き、その目撃談が浮世絵にも描かれて“一大ゾウブーム”が起きた。直接見たか絵を通してかは分からないけど、当時の大工が柱にゾウを描いてみたのでは」と市文化財課の龍孝明さん(35)はほほ笑む。

 展示では、「諸国御宿油屋喜平」と刻まれた看板や屋号入りの食器など、旅籠のにぎわいをほうふつとさせる品が並ぶ。宿帳など記録には残っていないが、「西郷隆盛が使った」と伝わる漆器の杯もある。

 史料によると幕末の松崎宿には129軒の建物があり、そのうち26軒が旅籠だった。旅人を対象にしたあらゆる商売がこの地にひしめいただろう。「当時のにぎわいはどんなものだったろう。見てみたかったなと思うんですよ」と磯部理事長。復元後の油屋では、人々が交流できる企画を考えているという。来春を心待ちにしているところだ。

   ◇    ◇

 企画展は10月28日まで、入場無料。第3日曜と月曜は休館。10月14日午後1時半には講演会「松崎宿と薩摩藩〜西郷どんたちが通った街道〜」と討論会「これからの旅籠油屋の活用について」が開かれる。申し込みが必要。市埋蔵文化財調査センター=0942(75)7555。










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