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安室奈美恵さんは私の「生活」になっていた

2018年09月20日 03時00分 更新

記者:久保田かおり


  • 安室奈美恵さんが引退した16日、福岡三越のイベント会場には入場待ちの長い列ができていた

  • 久保田かおり(くぼた・かおり)
    2003年入社。社会部、熊本総局、社会部、東京支社報道部を経て、2018年8月から3度目の社会部。
    久々に福岡でお会いした取材先から「スナックのママ感が増した」(いつも場末想定)と指摘されるが、お酒はほとんど飲めません。
    そして、まだ店は出していません(笑)

 2018年9月16日。後の世では「平成を象徴する一日」として語られているかもしれない。安室奈美恵さんが引退した日として。おじさんには「大げさ」と言われるかもしれないけど…。

 安室さんより1歳年下の私。9月16日午後、福岡市のヨガスタジオで、レッスンが始まる前にストレッチをしていると、聞き慣れた曲が聞こえてきた。

 ♬遠かった 怖かった でも 時に素晴らしい夜もあった 笑顔もあった♪

 安室さんの大ヒット曲「CAN YOU CELEBRATE?」(1997年)だ。スタジオではいつも、インドっぽい曲や自然の音などが流れるのに。幻聴かと思ったが、そうじゃなかった。

 「今日は安室さんが引退する日なので(この曲を)かけました(笑)」と女性講師。「でも、ヨガには卒業や引退はありませんからね」

 生徒は20〜50代の女性15人ほど。ヨガと安室さんという意外な取り合わせも、「悪くはないよね」という空気だった。

☆  ☆  ☆  ☆

 小顔に細眉、ミニスカートとニーハイブーツ(厚底)。数上げればきりがないほど、安室さんからブームは生み出された。

 世の女性にこれほど浸透したのは、安室さんの生き方に共感が集まったからだろう。できちゃった婚、離婚、シングルマザーと仕事との両立…。大物プロデューサーから”卒業”した後、歌とダンスはさらに輝きを増した。

 今年6月、東京で開かれたコンサート。2時間超にわたり安室さんはコンサートでMCを挟まずに歌って踊り続けたという。「しゃべったのは最後のあいさつだけ。体力の化け物だわ!」。会場にいた知人は証言する。安室さんは「ストイック」なのだ。

 アイドルとしてデビューしながら、昭和時代のアイドルのような男性目線の「かわいさ」ではなく、「かっこよさ」を追求した。プライベートを切り売りすることもバラエティー番組に出ることもなく、本業に徹した。

 女性の社会進出が進み、はやりのドラマの主人公は専業主婦よりもキャリアウーマンが描かれた時代。女性は強く、たくましく、自立せよという「平成」を体現した存在だった。

☆  ☆  ☆  ☆

 空手着で笑顔を見せる幼い安室ちゃん。私がまだ細眉だった学生時代のこと。旅行で訪れた那覇市の沖縄空手の道場で、安室さんの写真を偶然目にした。

 「とても真面目な子ですよ。口数は少ないけど熱心でした」。中学時代の安室さんを指導した男性が教えてくれた。「(デビューを見据えて)体力を付けることと、沖縄らしい特技を身につけたい」と一時空手に打ち込んだという。

 大阪で育った私が、かつて沖縄に対して抱いていたのは「リゾート」、そして「米軍基地」があり先の大戦で唯一「地上戦」が行われた場所というイメージだった。大阪から「平和学習」に行く学校も多かった。

 それが安室さんの登場後、「SPEED」などのアイドルや若手俳優が次々誕生し、沖縄は「スターを生む街」というブランドになった。

 安室さんの存在は、そこにとどまらなかった。8月に翁長雄志知事が亡くなった際には、ホームページに「沖縄の事を考え、沖縄の為に尽くしてこられた翁長知事のご遺志がこの先も受け継がれ、これからも多くの人に愛される沖縄であることを願っております」とつづった。

 2000年の九州・沖縄サミットでは各国首脳の前で歌った。そして今回、歌い納めの地に選んだのも沖縄だ。政治的な「沖縄」とは距離を置きつつも、故郷を思う気持ちは人一倍強いものがあっただろう。県民栄誉賞も受け、文字通り沖縄の顔になった。

☆  ☆  ☆  ☆

 1時間ほどのヨガのレッスンを終えようとする時、今度は自然と安室さんの歌が脳裏をかすめた。

 ♬そうだからBaby悲しまないで 考えても分かんない時もあるって 散々でも前に続く道のどこかに望みはあるから♪

 2007年にリリースされた「Baby Don't Cry」。当時は警察担当で、深夜まで警察官の帰りを待ちながらよく聞いていた。

 熱烈なファンという自覚はなくとも、四半世紀を経て安室さんは「生活」になっていたと気付かされた。「アムロス」という言葉が飛び交うほどに引退は、多くの人の心に衝撃を残した。でも――。

 ♬両手広げて全て受け止めるから 輝かしい未来へ Finally 心配なんかいらない 挫けそうな時も側にいるから♪
「Finally」(2017年)

 そう、安室さんはどこにも行かない。数々の歌が、これからも寄り添ってくれる。

 そしてきょう、9月20日は安室さんの41回目の誕生日。おめでとう、そして、ありがとう。










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