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元記者ピロシの醤油屋今日談

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強烈なテレビの影響力、そしてネット通販の恩恵と怖さ 醤油屋今日談(19)

2018年09月21日 03時00分 更新

記者:川崎弘氏


  • テレビ番組後に注文が相次ぎ、鮎魚醤の箱詰めに追われる女性スタッフ

  • 川崎弘(かわさき・ひろし)氏
    1980年、佐賀市生まれ。2003〜17年、西日本新聞の記者として事件、経済分野などの取材・執筆を手掛ける。17年10月、妻の実家である大分県日田市の醤油・味噌製造会社「まるはら」に転職。14年ぶりに新入社員に。ロック、カレー、日本酒好き。



 先週末の正午前、会社に1枚のファクスが届いた。イチ押しである鮎の魚醤の注文だ。これまで取引がある東京のネット通販の会社からで、1分ほど経ってから送信確認の電話がかかってきた。

 それ自体は珍しいことではないが、「在庫はありますか」「発送は何日になりますか」という受話器の向こう声が、どこかそわそわしている。「お急ぎですか」と尋ねると、「はい」。午前11時20分から放送された30分番組で鮎魚醤が紹介され、注文が相次いでいるという。

 「番組が終わって数分で60本くらい(注文が)来た。100本は超えそうですね」とのこと。

 この時点で番組の放送は関東地方のみ。九州では内容を確認する術はないので、雲を掴むような話である。ほかにも注文が来るかも、とのんびり構えていたら、隣の席にいた女性スタッフが「あっ」と嘆息。なんと会社のメールアドレスにも、20分ほど前から10件超の注文メールが届いていたのだ。

 事の重大さを認識した。すぐさま倉庫内の在庫を確認するよう、社長から指示が飛ぶ。あたふたしていると、また電話が鳴り、「いま、テレビに出てた商品はおたくの会社のですか?」と問い合わせがあり、「おそらくそうだと思いますが・・・」と歯切れの悪い答えをするしかなかった。

 後で確認すると、テレビ局からは事前に放送日の連絡が来ていたが、事情を知るスタッフが土曜で休みだったため、引き継ぎがうまくいっていなかった。

 取り上げていただいたのは、フジテレビの「KinKi Kidsのブンブブーン」という番組の「今すぐ欲しくなる! プロが厳選した絶品タレ7選」という企画。料理研究家の方が薦める和風だしとして、弊社の鮎魚醤が登場し、KinKi Kidsの2人と歌手の森山直太朗さんが、冷奴にかけたり、お湯に入れるだけでお吸い物になる食べ方を紹介して下さっていた。
 
 笑いを交えつつ鋭いコメントが飛び出すメリハリが効いた展開で、ありがたい以上に、心臓のあたりがこそばゆくなった。結果、番組の効果とみられる注文は、計約1200本。台風のように強烈なテレビの影響力を初めて目の当たりにした。テレビ様様、ジャニーズ様様である。

 過去にもテレビで紹介されて注文が殺到したことはあったが、今回違ったのは、電話がほとんど鳴らなかったことだ。テレビを見ながら、同時にスマホでショッピングをする人が増えていることの現れだろう。

 余計なお世話ではあるが、関東であれば、送料は1箱で1000円を超える。少量の注文だと割高な気もするが、人気芸能人が「おいしい」と言った食べ物の味を確かめたいという欲求は、送料の壁を一瞬で乗り越えてしまうのか。

 指先を動かすだけで手間がいらず、記録も残るスマホでのお買い物。商品名や電話番号を確認し、伝えなくてはないらない電話での注文より、ハードルは各段に低くなっている。電話は、もはや時代遅れなのかもしれないとさえ思う。

 中小企業にとって、全国に販路をつくることが可能なネット通販には無限の可能性がある半面、口コミや噂が日々飛び交い、目に見えない怖さがある。それでも、今後のことを考えれば、ウェブ上でのお客さまの購買行動が見逃せないことは確かだ。

 ちなみに、わが社のホームページは、デザイン、掲載内容、使い勝手など、改善点がテンコ盛り。人員態勢も不十分だ。いやはや、やらなければいけないこともテンコ盛りである。 










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