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激レアな「ドラクエの村」があらわれた フィンランドで遭遇、「序盤の勇者」も 高尚で文化的なコスプレの理由は

2018年09月27日 03時00分 更新

記者:三重野諭


  • プッキサーリ鉄器時代マーケットで出会った「序盤の勇者」。素敵やん

 「これって、ドラクエの世界ですね」。同行者の一言に思わず膝を打った。

 9月、取材で訪れたフィンランドの首都ヘルシンキ。都心部から近い観光名所のセウラサーリ島に向かう道すがらの光景に目を疑った。現れたのは中世にタイムスリップしたかのような、いでたちの男性。巨大な棒を手に、担いでいるのはもしかして盾?…ガチのコスプレイヤーだ。

 ガンダム推しをアピールしてきた記者だが、少年時代はそれなりにドラクエにもはまっていた。予定外だったが、作戦を「いろいろやろうぜ」に変更し、ツアーの日本人ガイドにガンガン通訳をおねだりした。

橋の向こうからやってくるヘイモラさん(左)ここはリムルダールの町の入り口か

 この男性は「戦士」ではなく、心理士として働いているというミッコ・ヘイモラさん(39)。話によると、セウラサーリ島のそばにあるプッキサーリ島には、20年ほど前に「鉄器時代」の市場を再現したような施設がEUの資金で建てられたという。

 ただその後、その施設を管理する人がいなくなったという。そのため、ヘルシンキの市民を中心にした二つの団体が年に1回、伝統を伝えるためにマーケットを開いているそうだ。

 団体のホームページによると、イベント名はその名も「Pukkisaari Iron Age Market(プッキサーリ鉄器時代マーケット)」。年に1回、9月の最初の週末に開かれているらしい。フィンランドにおける鉄器時代は、後期だけでも、575〜1300年という長期を指すようだ。長い。

 「フィンランドの歴史的な書物はスウェーデンの支配の時代から後ものが多い。その前の時代のことはあまり知られていないので、フィンランドにもちゃんとした鉄器時代があったことを知らせたい」。ヘイモラさんは熱い思いを語ってくれた。

 団体にはヘルシンキを中心に他の地方からもメンバーがいるそうで、博物館で働く人など、ルイーダの酒場ばりにいろんな人が集まっているそうだ。

 初めて訪れたフィンランドで、はぐれメタル並みの激レアなコスプレイベントに偶然出会えるなんて。興奮のあまり「本気のコスプレだ」と連呼する私。同行していたガイドや旅行会社の社員が「もっと高尚なものですよ」「文化的なものだ」とたしなめてくる。いや、コスプレも十分、文化的ですよ。

 「私にとってはホビーだけど、自分の人生を使っています」というヘイモラさんの表現にも、コスプレ的なニュアンスを感じる。衣装は10〜11世紀のバイキング時代のもので、靴は現代のものだそうだ。楽しみながら、歴史を伝える。そんな有意義な取り組みである。

ヘイモラさん(左)ともう1人の男性。男性の足にはトナカイの皮

 もう1人、男性が近づいてきた。こちらの方が腰に下げているのは「どうのつるぎ」か。気合いが入っている。団体では衣装を自分で作る人が多いそうで、足にはトナカイの皮を買い、巻いたという。ただ、弓?っぽいものは既製品を買ったとか。

プッキサーリ島へと通じる道

 せっかくの隠しイベントとの遭遇。元々の取材の予定そのものを変更し、マーケットへ寄り道することにした。セウラサーリ島への入り口から右にそれて、手作り感満載の木製の橋を渡って、中の見えない林の中へ。そういえば北欧のこのあたりはドラクエⅢの地図で言えば「エルフの隠れ里」がある所じゃないか…。雰囲気ありすぎ。

プッキサーリ島で開かれていたマーケット。まさにドラクエの村

 村にいたのは(当然だが)エルフではなく、温かな人々だった。「ようこそ!プッキサーリのむらへ」とセリフが返ってきそうな集落に入ると、金属製の鍋やバケツの周りで煙がもくもく。「はっぱや、はなをゆでていろをそめているのよ」と女性が教えてくれた。

 広場にたどり着くと…中世の格好をした老若男女。木やワラでできた、いかにもな家。盾や剣っぽいものを持った男たち。ここはマイラの村か、はたまたテパの村か。キメラのつばさはどこで売っているのか。

コーヒーをやかんからポットへ
右の建物でコーヒーを沸かしていました

 村では、コーヒーを売っていた。日本で飲んでいるものと明らかに違う味だ。やかんに直接コーヒーの粉を入れて、水を沸騰させたものを注がれた。旅行会社の社員によると、かなり昔から遊牧民族が飲んでいたらしく、今でも現地でアウトドアを楽しむ人たちは同じような飲み方をするそう。コーヒーの粉がコップに沈殿するのを待って、上澄みを飲むのだとか。

犬。もしやムーンブルクの王女では…

腰にまいたジャラジャラもそれっぽい

 まな板でにんじんを切る女性、犬、腰についたジャラジャラ、赤ちゃん連れ…いちいち絵になる村で、ついに「勇者」を見つけた。それも冒険開始から間もない、「序盤の勇者」だ。

おどけた勇者。これが正統派「ぬののふく」か

 なんてフォトジェニック。ルーラが使えたら、また来ることができるのに――。私の心の中にある冒険の書に、勇者の素敵なおどけた笑顔をセーブした。

(取材協力:フィンエアー、福岡空港利活用推進協議会)



<次ページはおまけ:動画と写真で見る「ドラクエの村」>










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