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元記者ピロシの醤油屋今日談

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台風襲来でも蔵開きを決行した友人 醤油屋今日談(20)

2018年10月05日 03時00分 更新

記者:川崎弘氏


  • 台風24号が接近する中でも賑わった、丸秀醤油(佐賀市)の蔵開き

  • 川崎弘(かわさき・ひろし)氏
    1980年、佐賀市生まれ。2003〜17年、西日本新聞の記者として事件、経済分野などの取材・執筆を手掛ける。17年10月、妻の実家である大分県日田市の醤油・味噌製造会社「まるはら」に転職。14年ぶりに新入社員に。ロック、カレー、日本酒好き。



 10月1日は「醤油の日」だった。そんなの知っているよというあなたは、おそらくクイズが得意な方でしょう。僕はこの業界に入るまで聞いたことありませんでした。

 ちなみに「日本酒の日」も10月1日。日本人に長らく親しまれている食品の記念日がカブるのも、どこかモヤモヤする話。調べてみると、どちらも名称の漢字の一部である「酉」が10番目の干支であることにちなんでいるようだけど、制定されたのは日本酒の方が25年も早い。もしや、業界がパク…(自主規制)。

 由来はともかく、友人が経営している醤油屋では、この日に合わせて工場を一般開放する「蔵開き」を行っている。佐賀市の丸秀醤油という会社で、社長の秀島健介君とは小学校から高校まで同級生。長いこと会っていなかったが、縁あって同業者となり、昨年再会した。

 子どものころから、醤油屋の跡継ぎという宿命を背負っていた秀島君。そういう意味では大先輩である。

 日本酒の蔵開きはすっかり市民権を得ているが、九州の醤油メーカーでは珍しい取り組みだ。秀島君は6代目に就任し、昨年10月1日に初めて企画。準備は大変だったそうだが、味噌作り体験や木桶づくりのデモンストレーション、加熱処理をしていない醤油の限定販売など、醤油屋ならではのイベントが盛りだくさんで、工場内は大盛況。私も一家で参加し、楽しませてもらうと同時に勉強になった。

 2回目となる今年は9月30日の開催に向けて準備を進めていたが、台風24号の襲来の憂き目に。中止はやむなしかと思ったが、なんと蔵開きの2日前の夕方に、「規模を縮小して決行する」という書き込みがフェイスブックにアップされた。

 悩んだ跡がうかがえる文章に、胸が熱くなった。以下、秀島君のブログより抜粋。
 
 (蔵開きは)当社にとっても1年で一番大事なイベントだからこそ、今まで長い間準備を進めてきました。
 去年、蔵開きの後、反省点や改善点を社員全員に「ひとり20個以上挙げて」とお願いして書き出してもらい、それをもとにできるだけの改善を今回おこなってきました。
  より多くの方により楽しんでいただけるように、あたらしい備品を購入したり、自分たちだけでできないことは外部の人たちにお願いしたりして、かなり去年よりパワーアップした蔵開きに進化させる予定でした!
 それだけに、今回の台風直撃は本当につらいワケです。。。
 台風が来ているのを避けることはどう頑張ってもできないですが、後ろ向きになっていてもしょうがないと思うので、今の当社のキャパでできうる最善のものを全力でやろう!と決めました。


 台風が来る中での開催の決断は、社長としての覚悟を問われたと思う。台風の進路は九州北部をそれていたが、僕が会場に足を運んだ時は、外で強風がビュービュー吹き荒れ、2歳の娘はずっと「コワい、コワい」と連呼していた。

 そんな悪天候の中でも、工場内を見学したり、塩こうじ作りを体験したりと、多くの人が蔵開きを楽しんでいた。来場者数では好天に恵まれた昨年に及ばないが、いかにこの日を楽しみにしていた人が多いかがうかがえるイベントだった。

 会場で秀島君に声を掛けたが、どこか言葉少な。体調が芳しくないのかなと思ったが、おそらく、お客さまにケガがないように、気を張っていたのだろう。リスクを覚悟して決行に踏み切った彼に敬意を表したい。

 さて、自らを省みると、わが社には蔵開きなどの催事はない。いつかやってみたいが、入社2年目に突入したばかりの僕は、普段の仕事を覚えるので精いっぱいで、新しいことに挑戦するハードルは高いのが現状だ。秀島君のところも、「醤油屋に蔵開きは必要ない」と言う先代を説得するのは大変だったようだ。

 とはいえ、わが社は来年、120周年を迎える。その年に何もしないのも、いかがなものか。

 ちなみに、来年10月はラグビーのワールドカップ日本大会の真っ最中。九州で最も良い試合が予定されている大分は、外国人観光客の集客などでそれなりに盛り上がっているはず(ラグビーファンとしての切なる願望)。

 それに、同時期には、財務省のスキャンダルがまた出なければ、という前提ではあるが(苦笑)、消費税が8%から10%に引き上げられる。食品は現行の税率8%が据え置きされるが、消費の落ち込みが懸念されるため、PRは大切だ。

 う〜ん、やっぱり、何か考えないと…。そんな妄想を一人で膨らせてしまうくらい大きな刺激を受けた、友人の取り組みだった。











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