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増え続ける「無人」の便利さ、消えつつある心の風景「夜市」 趙さんの瀋陽来信(4)

2018年11月05日 03時00分 更新

記者:チョウ・イーリン氏


  • キャッシュレスの進展に伴って、街中で増えている自動販売機ビジネス。ココナッツが買える

  • デパートや高速鉄道の駅などでよく見かける無人ミニカラオケ。お買い物や乗車前のリラックスできる空間として人気。
    ウィーチャットペイで登録してから歌い、料金はウィーチャットペイから自動引き落としがされる

  • 瀋陽のデパートに進出している日本の人気商品

  • パートのグルメフロアで見かけた、人気のある日本食を、お店の看板メニューとしているお店

  • 夕方の町並み、「夜市」が消え、さびしい雰囲気が漂う

  • 趙 ●琳(チョウ・イーリン)氏
    1979年中国・瀋陽生まれ。大学卒業後の2002年に来日し、2008年に東工大院社会理工学研究科を修了。博士(学術)。現在は、富士通総研経済研究所の上級研究員。好きな言葉は、老子の言葉「千里之行、始于足下」(千里の道も一歩から)。趣味は、休日に家族と気軽におしゃべりをしながらの山登り。
    ※●は「偉」のにんべんが「王」へん

 8月下旬、2年ぶりに瀋陽へ帰省した。

 今年の夏は世界中が熱気に覆われ、瀋陽でも37度前後の日が一週間以上続いた。異常な暑さとして記録されたが、幸いにも、帰省中の暑さはだいぶ落ち着いていて、涼しく過ごすことができた。

 「瀋陽の街、変わったかなぁ・・・」。瀋陽に着く前からドキドキしていた。

 まず目に留まったのが「自販機」だった。定番のドリンク類のほか、フレッシュなオレンジジュース、新鮮なココナッツまで買える。なんてバラエティだ。

 実は、これまでの中国では、自販機ビジネスは考えられなかった。それはなぜか。残念ながら過去に、現金を取り出す目的で、自販機を壊してしまうケースがあったからだ。

 本連載の3回目でも紹介したとおり(「財布よりスマホが大事」)、中国では急速にキャッシュレスが進んでいる。キャッシュレスの進展と需要に伴い、自販機ビジネスをはじめとする「無人スーパーマーケット」や「無人ジム」、「無人ミニカラオケ」まで。「無人」と付くモノが、街中で多く見られるようになった。

 バス停の近くには、自転車シェアリングサービスの利用を呼びかける看板「低炭素生活、グリーン交通」を目にした。相変わらず、自転車に乗っている人たちも多い。

 この背景には、改善に向けてあの手この手を使っている反面、話題になり続けている「大気汚染」の問題がある。都市部の交通渋滞の緩和のために普及し始めた自転車シェアリングサービスだが、環境面にもやさしいとのことで、その利用が推奨されている。

 瀋陽の冬は、石炭の使用でいつも曇りがちだが、夏になると一番クリーンな空になる。やはり、キレイな空を見たい。

 一方、デパートの店内では、これまでになかった日本製のカウンターや日本食を販売するショップと出会った。値段を見ると、日本と比べて高額にもかかわらず(当然、関税などもかかるため)、依然として人気が高い。「日本製は良いもの」というイメージがすっかり定着しているからだ。

 そしてひとつ、残念なこともあった。

 例年、実家近くのエリアが夕方になると、夏の風物詩とも言える「夜市」に変身し、賑やかな街になる。だが今年は、瀋陽が国家衛生都市としての評価を満たすため、「夜市」が禁止されたとともに消えてしまった。

 瀋陽人にとっての「夜市」は、重要な存在だ。

 冬が長く寒い瀋陽では、大勢の人々が家にこもりがちになるが、夏は夜の生活を十分に楽しめるチャンスの季節だ。散歩の場所でもあり、美味しいB級グルメを食べられる場所でもあり、ちょっとした買い物もできる。家族や友人たちと「仕方がないね」と話してはいたが、本心はさびしい気持ちでいっぱいだった。

 こんな中、屋台などで商売をしている人たちの生計は大丈夫だろうか、と気になった。

 国家衛生都市としての評価も重要かもしれないが、もっとも大切なのは、市民の生活目線でのアクションではないか、と感じる。

 また、久しぶりに会った多くの友人たちが話題にしていたのが、「育児」や「教育」の難しさだった。

 ここ最近の中国では、小学生を対象とした、授業や宿題の負担を減らす「減負」が行われている。しかし、下校時間が早くなるため、共働きの親たちはどうすればいいだろうか、といった声もある。

 「高い『学区房』を買うかどうか、迷っているよ」。これは、入学前のわが子のために、良い学校に入学できる学区内のマンションを購入するかどうか、という意味だ。

 また、別の友人はこう話した。

 「年間100万円前後の学費を、高校まで負担できるか心配・・・」

 年収400万の家庭で、子どもをインターナショナルスクールに入学させたものの、これからの不安や心配は多い。

 次回は、この話題の続きとして、瀋陽で抱えるさまざまな「育児事情」から、中国で多く見られる家族構成「421社会」(祖父母4人、両親2人と一人っ子)の光と影を見ていきたい。










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