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城下町の表具店、地震全壊越え再び 熊本で創業130年 6代目「和の心残したい」

2018年10月12日 03時00分 更新

記者:国崎万智


  • 熊本地震の本震で全壊する前の店舗。軒先の「ばったり床几」が名物だった(森本さん提供)

  • 森本さんが破損部分を修繕した出水神社のついたて

  • 6代目店主の森本多代さん

 熊本地震で全壊し廃業に追い込まれた創業130年を超える老舗「森本襖(ふすま)表具材料店」(熊本市中央区)が、営業再開へ歩み始めた。地震からもうすぐ2年半。被災者が日常を取り戻すにつれ、掛け軸などの修復依頼がたびたび舞い込むようになり、6代目の森本多代さん(59)が店舗跡地での再出発を決めた。町屋が次々と姿を消し、往時の面影を失いつつある城下町に、小さな明かりをともそうとしている。

 加藤清正が熊本城を築いた当時から物流の拠点として栄えた古町地区に店はある。戦時中も運良く空襲による戦火を免れた。職住一体となった町屋造りで、瓦屋根や折り畳み式の陳列棚「ばったり床几(しょうぎ)」は多くの観光客を引き付けた。

 ふすまや掛け軸、びょうぶなどの材料を仕入れ、職人などに卸す傍ら、森本さんが修繕を手掛けることもあった。表具全般を扱い、珍しい廃番商品もそろう店には県外から訪れる客も少なくなかった。

 2016年4月。2度の激震に襲われ、店は瓦が崩落、はりが外れるなどして全壊。大量の在庫は風雨にさらされ、ほとんどを処分するしかなかった。

 生活様式が変わり、表具文化が衰退する中、地震前から店の経営は先細りしていた。森本さんは被災を機に営業を断念し、町屋も昨年7月に解体。惜しむ声はあったが、振り返る余裕はなかった。

 気持ちが動いたのは、地震から2年ほどたった頃。かつての取引先や地元の商店主から「(表具の)修繕をお願いできないか」という相談が増えた。遠方の業者に頼むとコストは何倍にも膨らむ。「何か手伝えるなら」と、10件ほど依頼を受けた。被災した掛け軸などが装いを取り戻し、依頼人の元に帰ることに喜びを感じた。「やれるところまでやりたい」。心が決まった。

 細川家を祭る中央区の出水神社の社務所では、森本さんが修復したついたてが客を迎える。事務局長の上村秋生さん(71)は「地域に残る文化財をよみがえらせ、守ってほしい」と希望を託す。本格的な再開は来年の自宅再建後になりそうだが、森本さんも「質の良い物と和の心を残したい」。城の歴史とともに生き続けた店の、新たな物語が始まる。










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