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宿泊税で対立、福岡県・市の担当者に聞く

2018年10月18日 03時00分 更新


  • 宿泊税について本紙取材に応じる福岡市の吉田宏幸観光コンベンション部長=17日午後、福岡市役所(撮影・佐藤雄太朗)

  • インタビューに答える福岡県の高原稔観光局長=17日午後、福岡県庁(撮影・富田慎志)

 ホテルや旅館の宿泊客から徴収する「宿泊税」を巡り、福岡県と福岡市が対立を深めている。広域的な観光振興に向け導入を目指していた県に対し、宿泊施設が集中する福岡市の市議会が、宿泊税を県全体で使われることを懸念し、一足先に導入案を可決。県と市の協議は平行線が続いている。税の必要性や使い道といった本質の議論も欠かせない。双方の担当者にそれぞれの主張を聞いた。

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観光には広域性ある 高原稔・福岡県観光局長

 宿泊税を導入し、県全体の観光振興を図りたい。2017年度の福岡県内の入国外国人数は12年度比3・8倍の約319万人、延べ宿泊者数は同1・2倍の約1700万人で全国の伸び率を上回る。観光を支える産業の裾野は広く、大きな経済効果が期待できる。県の歳入が限られる中、新たな財源を確保し、違法民泊対策や、駐車場不足に伴うトラブルなど地域住民の負担軽減にも生かしたい。

 福岡市の宿泊者は、名所のある太宰府市や柳川市などを周遊する傾向がある。観光の呼び水になる銘菓や農産物なども多くは福岡市外で生産されており、観光は県全体で成り立っている。観光は広域性があり、県税とするのが望ましい。

 また、県は行政区にとらわれない観光振興に努めてきた。県が設置している訪日客向けコールセンターは、福岡市内からの利用者が約7割を占める。福岡市は市独自の観光振興の財源として課税したいのだろうが、県が福岡市の実情に応じて財政支援をすることも可能だ。

 福岡市は市独自で課税し、市内だけで還元する姿勢を打ち出している。県が先に議論を始め進捗(しんちょく)状況も伝えていたにもかかわらず、不誠実と言わざるを得ない。県と市の二重課税になれば納税者負担は重くなり、宿泊業者の手続きも煩雑になる懸念がある。県は、有識者らでつくる検討会議で議論を進めている。19年度中に最終報告案をまとめる予定だが、前倒しできるようにしたい。事態打開のため、小川洋知事と高島宗一郎市長のトップ会談を早期に実現できるよう調整する。 (聞き手は大坪拓也)

   ◇   ◇

「玄関口」強化へ必要 吉田宏幸・福岡市観光コンベンション部長

 福岡市は「九州の玄関口」としての役割を担っている。実際、福岡市に入って九州各地を周遊し、福岡市から帰る旅行者は多い。市が注力するMICE(国際会議や展示会など)でも、会議後の観光で大分や熊本など九州各地に参加者を送り出してきた。

 その役割を果たすため、市はこれまでクルーズ船のターミナルやMICE施設、博多駅周辺の整備などに巨額の市費を投じてきた。近年は、訪日外国人客の急増で観光行政の需要が増大し、受け入れ環境をより強化していく必要が出てきた。「玄関口」機能を維持、強化するのは福岡市の役割であり、宿泊税による安定財源の確保で受け入れ態勢やおもてなし機能を充実させていきたい。

 税の使途はこれから具体的に検討するが、MICE施設の利便性向上、各地を周遊する観光バスの乗降場整備、九州の情報を提供するインフォメーションセンター設置などに活用したい。「玄関口」機能の強化で九州全体の観光活性化につなげることができる。

 福岡市議会が宿泊税の導入を決定し、市は具体的な制度設計を始めている。一方で、県は観光財源の在り方は検討しているが、宿泊税の導入は決めていない。県が宿泊税の導入を決めていない状況では、協議のしようがないと考えている。

 市は今後、宿泊事業者へのアンケートなどを通して税額などを詰めていく。仮に県も導入を決めれば、市内において「市税」と「県税」の二重課税となる。納税する宿泊者や徴税事務を担う宿泊事業者に過重な負担となる恐れがあり、慎重に検討していただきたい。(聞き手は黒石規之、写真は佐藤雄太朗)

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早急に協議の場を

 宿泊税を巡る福岡県と福岡市の対立は、双方とも掲げた主張を下ろす気配は今のところなく、協議の場の設置も見通しが立たない状況だ。

 県内には太宰府、柳川など観光資源が点在し、「観光には広域性があり、振興策は県全体で進めるべきだ」と訴える県。一方、クルーズ船の寄港回数で博多港が全国首位を続け、「観光客増加に対応するのは基礎自治体の役割」との立場を取る市。それぞれの言い分は理解できる。

 ただ、今回の対立では「県と市のどちらが税を徴収すべきか」という点に拘泥するあまり、宿泊税がなぜ今必要なのかや、税の使途など本来先んじて議論すべき検討課題がなおざりになってはいまいか。

 県、市ともに近年、訪れる外国人客は増加の一途。外国語掲示板や公衆トイレの増設、店舗でのキャッシュレス化など対策は急務だ。九州観光の旗振り役である県と市が不毛な争いをいつまでも続けていいはずはない。妥協点を見いだし、よりよい仕組みを作るためにも、早急に議論のテーブルに着くことを望む。 (富田慎志)










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